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その男 元・軍事スパイ （参ノ壱）
リクめの 曾祖父にあたる人物、無論 わたいはまだ産まれておらず、カオすら見てはいないのですが。
洋食屋を開いてたリクめの祖父、曾祖父の息子ですネ、そのジイさんから 幾つもの逸話を聞いていたのですが、
その中でも 象徴的な、「戦後の動乱期」の逸話を書かせていただきます。
曾祖父ですが、ジイさん曰く『寡黙で めったに怒ったりもしない静かなヒトやったが、かなり…謎の多いヒトやったデ』とも。。。
戦後 出身地である丹後半島の宮津の町で 「針灸」の看板を掲げ そこそこ患者さんを抱えていたらしいと。
目立たず、静かに静かに 日々暮らしていたようですが、ただ・・・「そうなる」までには、かなり数奇な半生を送っていた御仁でしてネ・・・
生家の稼業は 代々で、丹後半島が「丹後ちりめん」の生産地だったゆえ、和装が当然だった時代の、今でいいますクリーニング屋さん 《洗い張り 湯のし》を家はしていて、
曾孫であるリクの代で、遂に故郷は「捨てた」。。。
曾祖父…《エイスケ》も、当然 その家業を継ぐ筈だったのが・・・青年期にさしかかった時期に 日本全体が被ったのが歴史でも有名な『昭和恐慌』で・・・
読書好きだったエイスケは、マルクスだレーニンだって…要は「共産主義・社会主義思想」にカブレちまってからに・・・
『こんなド田舎に居てられっかいナ！！』って 書き置き残して故郷の家を出奔・・・京都市内の 共産主義者のアジト「セツルメント」に出入りする事に。。。
当時の共産・社会主義 過激派らのｱｼﾞﾄ
でネ、イキナリ…当時の闇の歴史に触れるンですが…若かったエイスケってのは、当時の「アカの連中」組織における いわば《鉄砲玉》で・・・
アカ集団の活動資金捻出のためって名目で・・・時代劇用語で《世直し》・・・ハヤいハナシが【 押し込み強盗 】だヨ！お立合い！ ＠＠；・・・ロクなモンぢゃない（－－；
ある意味…港のリクを産み出す要因なのかも（＾＾；
当時のアカ連中の思想では、お金しこたま稼いでルってそれダケで「フラチなるブルジョアジー、プチブル」だから。。。
アコギな質屋だの、繁盛してる商店とか、寝込み襲って『カネ出さんかいワレ』と・・・（－－； 鬼平のダンナにたたっ斬られてもモンクいえませんてば。。。
ホンで 曾祖父のエイスケ…遂に 関西一帯で《お尋ね者》になりましてン（笑） こりゃマジヤバいってンで、ぶっちゃけ汽車で東京まで 《逃げた》。。。
ンで、偽名使い 世田谷にあった 東邦化学純薬工業って、主に農業肥料用の「硝酸」それを製造する会社に 見習い小僧としてモグり込み・・・
硝酸は農業用肥料に欠かせないアイテムですが、同時に…「爆弾」それを作成する過程でも 無くてはならない重要コンテンツで・・・
考えりゃ 会社も被害者でおますだヨ…月給出して テロリスト育成（笑）雇ってたンでっから（＾＾；
で…労働の現場で蓄積した知識と技術をカンペキ悪用（笑）エイスケは テロリストにして《爆弾魔》にも成りまスて。。。
強盗行為自体は実行に至らず、死傷者も出さなかったそぉでおますが、ビル…たって、所詮は昭和初期の頃の 見栄えダケ西洋風ってダケの三階建ての建物に過ぎませんが、
その なんちゃってビル、土台事《吹き飛ばす》って…ンな荒業ブチかましましたエイスケ、東京警視庁にもマークされるって羽目に・・・
遊郭から朝帰り ボ～っとしていたらしい。。。
年貢の納め時ってゆ～のか？？…豊島区椎名町のソバ屋で ノンキにお昼ごはんとってたエイスケは、『刑事５名 制服警官１２名って大捕り物でとっ捕まってン』（ジイさん談）
さぞやキビしぃ 取り調べ・尋問…と…思いきや・・・一目見で 只モノではないって判る、訳あり風の刑事が…エイスケに向かって言うには・・・『な？（思想）転向せんかキミ？？』と・・・
『キミの技能を活かせる 恰好の仕事がアルのだ。ワルいようにはせん、転向しろよ な？？』って。
確証も無い 伝え聞きではございますが・・・
ジツのとこ、その現場は家族中でもダレも観てないから ハッキリとは判らんのですがネ、どぉも・・・そのヘンな持ちかけをしてきた人物って・・・
『隻手（片腕だったって意味）のヒトやったと聞いたよな気がするワ…』（ジイさん） なんか・・・かの有名な、満州帝国をウラで操った「日本のラスプーチン」こと、【 甘粕大尉 】では無かったかとも。。。
拒否すれば 即、特高警察に引き渡され、当時のセオリーとして、共産主義者、特に鉄砲玉の実行犯などは、取り調べって名目での激しい拷問とリンチ・・・
マジで 生きてシャバには戻れないってご時世でしたから当時は。『はい おおせの通りに従います』とエイスケ。
行かされた先は・・・ＪＲ中野駅の北口付近、今は中野サンプラザが建っているスグ横の公園、
1938年（昭和13年）3月に「防諜研究所」として新設。同年7月より特種勤務要員（第一期学生19名）の教育を開始し、
1939年（昭和14年）5月に同研究所は「後方勤務要員養成所」に改編、7月には第一期学生の卒業を迎え、
そして 1940年（昭和15年）には 正式に名称を【 陸軍中野学校 】とした…当時では その存在すら 一切 世間には周知されなかったという 最高ＭＡＸの極秘の「スパイ養成所」で・・・
はい…曾祖父エイスケは…イキナリ！ そこの「爆発物製造＆実行」科目の『教官』になっちまいましたとサ！！ ＠＠；
エイスケ自身よりも遥かに年上の中野学校教習生に バクダンの作り方と 仕込みの方法、それらをレクチャーするンですワ。。。
アカの爆弾魔が 一夜明けたら、陸軍の秘密機関で教官ってンだからアナタ・・・ぶっちゃけ 当時は「よっぽど！！」人手も余裕も無かったってゆ～証拠でおますだヨ うむうむ。。。
中野学校は 戦後 市川雷蔵主演で映画にもなっていて著名ですが、カッコいい映画での表現とは違い、
やがて始まった 太平洋戦争突入以後は、中野学校も次第次第に 余裕がなくなっていってたようで、
落下傘にて、今のﾍﾞｲﾙｰﾄ付近に着地して
昭和１９年には 遂に…教官職であるエイスケにも『スパイとして中東から北アフリカへ赴いてくれ』って辞令が交付。
エイスケの直系の ひ孫であるリクめが、なにかと中東とは仕事柄で縁が濃いのも なんか思うモノがございます はい。
因果は巡る…ですのかねぇ？・・・
で・・・正直、軍事スパイとしてのエイスケは、赴任した外地で 特出した成果を挙げることなく、２０年８月には 日本が連合国側に無条件降伏って、スパイ業としては終焉を迎えて。
日本に帰国するには苦労したらしいッス、北アフリカから船乗り継ぎ、大阪港に着くまでに １年半かかったのだとも。
かなりの苦労を経験し、福岡の博多港に辿り着き
「スパイ」は当時の用語で「間諜（かんちょう）」と呼ばれ、兵士は国際法で その身分を保護されリスペクトも受けますが、
間諜は、「武器を持ち前線で戦わぬ卑怯なる奴」って扱いですからネ、むしろ その存在自体を敗戦により「消された」とも云えます ええ。
戦後に「スパイ」が再評価されたのは『００７』以降でス
・・・そんな経緯で…故郷に戻り 針灸の仕事を始めたエイスケは 戦後の暮らしは抜け殻の如き、世捨て人の生活だったとも。
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朝鮮半島で南北の戦闘が始まり、敗戦後の占領下体制が段々と解かれた、昭和２６年の秋口、リクめの曾祖父エイスケを訪ねて来た人物が・・・
『エイスケはん…こんな片田舎で燻ってる場合とチャイまっせ。アンタに恰好の、いや…アンタのご先祖にも報いる為 やらなあきまへん！わたいアンタへの仕事依頼 請け負って来ましてん』
やはり元 京都のセツルメント仲間で、敗戦を契機にチャッカリ アカから資本主義者へ転向し、敗戦後の関西圏一帯で《ヤミ屋の大将》としてブイブイいわせてた人物《ソースケはん》が わざわざ宮津くんだりまで突然 訪ねてきて。。。
『へっ！警察も進駐軍も、とっくに篭絡済みヤ１怖いモノあらへん♪』
エイスケ「え？ ナンだすねんナ？？ でもワシもぉ…スパイだの間諜の仕事とか よぉヤリまへんデ」
ソースケ『そナ愛想ナイ事 云いないナ！話ダケでも聞いてンか、エエ話やデ ホンマに』
エイスケ「なるモンやナイがナ・・・スパイなんて。忘れられへんて！敗戦が決まったとたん 本国への一切の連絡方法遮断されて…せや、ワシの存在自体《無きモノ》にしやがってヨ、引揚げ船にも乗れへんで、何度も死ぬ思いして必死に日本に戻れたのヤ その恨みよぉ消えへんデ・・・」
ソースケ『まぁ…気持ちは判りまっけど、この通り！命は元気でアルだけエエやん♪ かつての仲間も 殆どは鬼籍に入ってまってるのやからヨ』
エイスケ「ワシに ナニさせよってのヤ？？ え？ソースケはん…」
ソースケ『ズバリ！…【 アンタの何代か以前、代々で世襲してた仕事やがナ… 】この家、エエ家やけどチト古いですわナ、建て替えの費用ぐらい保証されるデ この依頼は・・・』
エイスケ「・・・《代々世襲の仕事》・・・知っとったかアンタ…」
ソースケ『そう・・・各地を売り歩く《薬売り》とは隠れ蓑で…ウラ仕事というより、むしろ正体ってなら、アンタの家系…【 雑賀流の忍者 】それやん♪』
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ウチの家系は、有名な 服部半蔵とかって 伊賀流忍者集団の 徳川家家臣となった「御庭番」ではございません。
ある意味で《野良忍者》とでもいうか（＾＾； 戦国ヒーローとしてＧＡＭＥキャラにもなってます 鈴木孫一〈雑賀孫一）率いる 鉄砲集団「雑賀党」
その一員だったのですが、鈴木氏滅亡とともに、失職 野に放たれ、先祖はこの丹後の地にたどり着き、薬製造と販売 薬売りを稼業としてたのですが。
雑賀党時代の先祖は『おんな鉄砲撃ち』って説もあったりして…
でも…「その姿」は 世を偽るオモテの顔で…忍びとしての技術も習得してたらしい先祖は その技術をして、今で言います「産業スパイ」それをしてたいたらいいと。
雑賀忍者の特徴は ナンたって鉄砲が有名ですが、ジツはそればかりではなくて、
船を操る 海運技術と共に、当時の世での「経済分析」それが得意だったそうで ええ。
薬売りに身をやつし、各地の都会はもちろん 田舎の田園地帯を歩き回る。忍者としての訓練で、一歩一歩の「歩幅が」、常に一定の足取りでもって歩きます。
江戸時代初期より 関西圏では大阪の 堂島に、昭和１４年に機能停止するまで続いた《米相場 取引所》があり、。
相場は」「生き物」ですから、大豊作の年でも大損したりもあれば、逆に不作の年でも 作戦を練るなら 大儲けもありうるという、
それゆえ、米相場で儲けたい 当時の投資家筋らは 少しでも早く その年にとれる米の「情報」を求めました。先祖は 関西一帯でのコメの出来や 豊作不作それの情報ゲットに飛び歩いていたと。
付近に稲作の畑が在るならば、歩いた歩行数で 畑の面積が判ります。で、実っている稲穂の状態を観て そこの畑で摂れます「収穫量」を情報としてゲット出来ると。
有名な豪商 紀伊国屋文左衛門も米相場で儲けた１人
ナンでンな行為を？？ ってならば、それには当時の 今と異なる世の中の構造と流通が関係してましてネ。。。
日本史で習ったと思いますが、徳川の世が終わるまでの日本は「金本位制」でなく「米（コメ）本位制」でした はい。
お米が 本式の貨幣ではありませんが、流通で有効な「貨幣手形」として通用した時代です。
お百姓は 今でいうゼ金を 摂れたお米で納め、大名がそれを市場に卸し 利ザヤを得て、その原資が 家臣の武家の給与となる。
今よりも数十倍も 毎年秋のお米の豊作・不作は切羽詰まった深刻事だったンですネ ええ。
今でいう「大商社」が、「仲買人」として君臨していたのですが、戦国の世ではけっして公平とも呼べず、
徳川の治世になり、大坂・堂島では、宝永・正徳期から米相場が始まり、紆余曲折の末に享保15年（1730年）になって江戸幕府の公認を受け、堂島米会所を開いたと。
これが現物先渡し契約の無 公認の近代的な商品先物取引の始まりで。
ソースケはんは、曾祖父に『まあ 一杯ヤリながらユックリ話そやんか。ホレ、持参したデ、心配あらへん、カラダに負担が来ぃへん、上物の酒やあから♪ まぁ…合成酒には変わりあらへんけどナ…』
多くの人にとって貴重品だったお酒。食料さえままならぬ時代、ヤミ市には安価な芋や麦などの糖質を発酵させて造ったカストリ、燃料用アルコールを水で薄めたバクダンと呼ばれる密造酒を出す飲み屋が無数に立ち並んでいたそぉで、
バクダンにはメチルアルコール入りのものがあり、死者や失明者が続出したのに対し、カストリは鼻につく匂いはあるものの、中毒の心配がないため、新聞社や出版社が集まっていた有楽町界隈には、酒好きの多い作家や記者、編集者などの集まるカストリの屋台が林立していたそうです。
エイスケ「・・・ほほぉ…ゴッツぃ上物やなコレ…、エゲつない匂いも味もせぇへん、なんか日本の復興を感じさせるわナ」
ソースケ「せやろ♪ 来年あたりにはヨ、バクダンやカストリなんぞと無縁の、本物の《酒》が町の店頭に並ぶってワシは睨んどる」
ソースケはんは フト、遠い目をして・・・
エイスケはんは、京都から東京へと逃れて、陸軍中野学校の教官にならはったやん…イヤ、アンタの思想転向を責めてるのと違うデ・・・
ワシもナ、官憲、特高警察が怖いってより、…イヤになってナ。。。当時の共産主義セツルメント内部の《セクト争い》それやがナ・・・
つまらん事で対立しては、夜道で襲ってはドツき回すとか…組織内のリンチがいい加減イヤになってン ワシ。
『満州では エエ夢見させて貰ろたデ ああ…』
そんで、ワシ《満州》に渡ったんヤ ああ。日本人が多く入植した満州は寒冷の地であるのと入植者に青年層が多かったので、日本国内に比較して1人あたりの清酒消費量は2倍と言われててナ、
その為、日本国内より相当量の清酒を移入するとともに、満州国内でも清酒の製造を行ってたのやけど、ご存じのように、満州の水ってゴッツぃ硬水やん？ オマケに酒造適性の乏しい満州産米を使わざる得なかったこと、設備の貧弱な酒造場が多く腐造や火落ちなど品質に問題のある酒が後を絶たなかったこと、既成の日本酒は現地の極寒の気候では凍ってしまうことなどから、
酒には目が無いワシとても、飲む気が起こらん それはヒドいモンやったデ。。。
1940年(昭和15年)に日中戦争の拡大により原料米の統制が行われ、日本国内の清酒製造量が半減した為、日本国内からの清酒移出量が減少しました。この時期に新京の丸三工業株式会社にてアルコール添加酒の標準的な製造手法を確立し、1941年(16年)に満州全土の酒造場でアルコール添加酒の製造が実行に移されてナ、
混ぜ物入りの「新・日本酒」の誕生でおますだヨ…
このお酒は満州にて、第一次酒または第二次増産酒と呼ばれたのヤ。ジツはナ…このワシ、その事業に一枚噛んでいてヨ、今現在につながる資本の基礎を築かせてもらった。
で、次第に日本本土でも 米不足の為 ワシらがヤリ始めた 混ぜモンの酒造りを真似てヨ、アルコール添加酒が造られるようになったんヤ ホンマやデ？
化学実験室でこさえたに近い酒なんですが・・・
1941年(昭和16年)に太平洋戦争がはじまったことにより、日本国内でも米不足に拍車がかかり、1942年(昭和17年)に食糧管理法が制定され、酒造米も配給制になりました。
戦時下状況の中で清酒増産の為にアルコール添加酒の製造が酒不足の解消の近道と考え、醸造試験所で1942年に試験醸造を行い、同年55の酒造場で試験醸造を行ったのやけど、
アルコール味を残し酒の旨味やゴク味が乏しくなったため、甘み成分の増強を目的とした四段添加や、乳酸・コハク酸・クエン酸等を添加する補酸が大々的に行われてナ・・・
1944年(昭和19年)には、内地の全酒造場でアルコール添加酒が製造されるようになりよったのやけど、日本酒の純粋性と品質低下を招くとの批判があったので、大蔵省はアルコール添加酒を原則的に清酒三級として扱うように通達を出したんヤ。
な？？笑ってまぅやろ？？栄えある 神国ニッポンがヨ、満州の地でワシら悪党とかが、苦肉の策でこさえた《いんちき酒》・・・
それを 本土の方で真似よって、酒飲みらの不満を必死で押さえてたって♪
・・・で…いよいよハナシは戦後になるんやけどナ・・・
太平洋戦争の日本の損失ってエイスケはん 考えたことアルか？・・・
総額で約497億円(現在の貨幣価値で約140兆円～150兆円）人的被害も1937年(昭和12年)の人口を100とした場合)、人的被害が約310万人(厚生省援護局より)あり、1945年(昭和20年)当時の日本の人口が約7200万人で総人口の約4.3％が犠牲になってんのヤ ああ。。。
実際、空襲により日本の主要都市はほとんど焼け野原となりよったし、、農業生産に至っては1945年(昭和20年)の米の収穫高は1944年(昭和19年)の約半分近くまで減少し、水産漁獲高については1947年(昭和22年)の時点で戦前の約6割までしか回復してへん、よくもまぁ…今の今まで飢え死にせんかったとしか。。。
さあて いよいよ問題の核心部分に突入ヤ・・・こうなると当然日本酒の生産どころではなくなり、1935年(昭和10年)の時点で日本酒の生産量が約407万石だったのが、1945年(昭和20年)時点で約84万石まで減少しよったからナ、
酒蔵の数も1930年(昭和5年)に8000場以上あったものが、昭和初期の不況や戦時の企業統制、空襲の影響で約3800前後まで減少したものナ。
日本の敗戦で、満州でのニセ酒なんかとは縁切りだと思ってワシ帰国したのやけど・・・
太平洋戦後の1945年(昭和20年)以降、兵士の復員や農業生産量の減少、流通網の破綻等により、日本国内では、国民の日々の食事分すら無い程、深刻な食糧難が起こってたからナ ああ・・・
特に酒造業は前記の通り壊滅的な打撃を受けており、空襲などで焼かれた酒蔵だけでも223場、昭和20酒造年度の全製成量の17％の酒が失われ、杜氏や蔵人の戦死者も多くあり、その上原料となる米が絶望的に不足してて、酒造りどころでは無かった訳やて ああ。
『日本各地で、目を覆うばかりのニセ酒 闇酒が蔓延してた』
結果どないなるか？？・・・当然の結果ヤってワシは考えとる、兵士の復員などで飲酒人口が増えたにも関わらず、酒類の供給量が追いつかなかった為、闇市にてメチル、カストリ、バクダン等の密造酒が大量に横行しはじめてナ。
言い訳はせぇへん、このワシは あくどい闇屋の大将ヤ、でも…チョっとだけ言わせてくれ・・・
このワシかて 本音の部分では《闇酒》なんぞウリとぉ無かったデ？ メチルなんか戦争中に石油燃料の代用に製造されたエチルアルコールを水で希釈したものにメチルアルコールを加えて、人が間違えて飲まないように桃色に着色したモノやん！酒への渇望から手を出して失明したり死亡したりする人が出て当然ヤ。
カストリは、酒粕から造った粕取り焼酎とは別物で、密造の粗悪な芋焼酎の事を指し、飲んだ後のコップが脂ぎって汚れるのが特徴・・・
バクダンとは、戦時中の航空基地などで使い残された燃料用アルコールを活性炭で脱色し水で薄めたもので、即席焼酎などと呼ばれて販売され、失明、死亡率が最も高いって。。。
・・・ぶっちゃけ…【 毒やデっ！！ 】アホらしっ！ ダレが売りたいかって！こんなロクデモない飲みモンなんぞ・・・
だが…逆の視点で物事考えてみようヤ・・・毒であることを判ってても…《あえて》…毒でもエエから それとか飲んで、辛い今の現実を忘れたい・・・
酒飲み以外でも…戦前まで 深窓の令嬢やった娘はんが、今日にはガード下で パンパンしてるのだっせ！この国は《破壊の極み》せやろ？
そういうイチ国民、労働者の《心情を》…政府や役人は１度でも考えたことアルのやろか？？・・・
ココロならずも・・・ホンマやデ？ ココロならずも、ワシは そんな庶民の渇望の声に 応じざるを得なかったのが正解なのヤ。
闇屋の倉庫の雨戸の扉を 朝の５時やデ！…《サケあらへんのか！？ サケ出したらんかい！！》って…毎朝叩かれるのやデ？
エイスケはん 知ってはるやろ？ ワシらのよな 闇屋稼業を中心として羽振りの良い連中を指して《戦後成金》って呼ばれてるわナ？
でも 判ってる・・・こんな繁栄は イってみりゃ《時代の仇花》それに過ぎんデ ああ。ワシのツキも いずれ早々に消えよるやろって ははは。
でもナ…ワシなりに、悪党なりに…ワリと真剣に考えてることアルねん、数多くの健康被害を生み出し、世の治安も悪化させた【 その責任をとる事業 】・・・
ワシ個人としては、尼崎にナ、アルコール中毒とアルコール健康被害者のための 専門病院設立したねん ああ。・・・方々にワイロ配って回ってヨ ヒヒヒ♪
でも、そんなんで罪滅ぼしだとは思っとらへん、要するに この問題の核心は・・・この日本に【 戦前のような 真っ当な《酒》それが再び流通出来るようになる 】
それこそがなによりもの特効薬、ストレプトマイシン並みのワクチン効果やん！
エイスケ「・・・なぁソースケはん、概要は理解したけどヨ…具体的に…アンタ、このワシに ナニせぇって、言わはるんヤ？？」
この敗残の…忍者の子孫にアンタはナニを？？…
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ソースケはんが帰っていったあと、曾祖父エイスケはしばらく、応接間の座敷に座り考え込んでいたそうで・・・
傍らには やはりソースケはんが手土産で持参した 米軍基地ＰＸ放出品のウィスキー「ホワイトホース」の瓶が。
・・・こんな、ホワイトホースなんざ、米国本土では 安物ウィスキーの代名詞って 外地に居たワシは判ってる。
だが・・・哀しいかな この敗戦国 今のニッポンでは、この安物ブレンデッド・ウィスキーが成功者の愛玩品であり、庶民層の垂涎の的・・・
要は…戦争に敗退するってのは、それほど惨めで《貧しく》なるのだ・・・低ランクの洋酒をさも有難がり、家畜のエサ用に回すはずの小麦や雑穀を戦勝国より恵んでもらい パンとか作り優雅になったよな幻を喰ってるのだ この国の今は・・・
ソースケはんはさらに述べます・・・
これはエエ知らせって割り切ろうと思う。あんナ？ 福井から始まり 富山 石川 そんで新潟ナ、日本海沿岸に既存した《酒蔵》空襲で焼けてまったとこ意外に多いのヤ ああ、
が…その酒蔵で赤紙で徴兵されるまで働いてた 酒造りの《杜氏》…かれらの多くが戦死回避して 続々帰還を果たしてナ♪
だが 肝心の…再び働く 酒蔵がもぉあらへんやろ？せやからヨ、ワシも陰で働きかけたのやが、京都 大阪 兵庫って、老舗の酒造メーカーが 職場失った杜氏らを 雇い入れるって、運びとなってん。
しかし・・・ジツにもって 大きな問題が立ちふさがった・・・【 原料の米ヤ 】・・・
横ヤリが入った・・・農林省とその傘下の食糧庁ヤ…《まだまだ国民全体に十分な量のコメは行き渡ってはいない！その状況の中で、貴重なコメを酒造りに回そうとは何事だ！！》って理屈でナ。。。
まぁ道理やけどナ…コメは事実として《国民配給制》、身分を証明するには《米穀通帳》がなにより。この状態は まだまだ１０年は変わらんと思う。
『本格的戦後ﾆｯﾎﾟﾝの酒造り、闇米には頼れんしヨ』
（ソースケは 急に、ギラついた目つきに変わり・・・）
幾度と修羅場くぐったワシやデ、そんなんでメゲるかいナ！！ そこで・・・ワシらが 目を付けたのが…【 この関西圏一帯の 《隠し田》それヤ！ 】
非合法、極秘の隠し田 それがあった！！
通称「隠し田」 隠田（おんでん）は、農民が年貢の徴収を免れるために密かに耕作した水田のことで 隠田は「かくしだ」あるいは「いんでん」とも読み、現代仮名遣では「し」を補って、隠し田とも書く。忍田（しのびだ）とも言うが、同様に忍び田とも書く。他に隠地（おんち）、隠没田（おんぼつでん）もいうが、これらも同義語。
日本の律令制の時代から既に存在した違法行為で、為政者から見れば脱税にあたるため厳しく禁止されており、発覚すれば土地は没収（没官）の上で、追放に処される程の厳罰がとられた。隠田は通常人の目に着きにくい山間や谷間に開墾された。太閤検地などを通じて摘発が試みられたが、江戸時代になっても新たに隠田は開かれ、一部は地租改正まで残存した。これらの田畑で耕作した収穫物を（納税せずに）全て自身の物とする行為は「作り取り」と呼ばれた。
土地以外の者が訪れない 山の段々畑、そのもっともっと奥の土地に、大概そういう 隠田がアアリよんねん。
心配あらへん 事前の斥候で おおよその場所は突き止めておるよってナ♪ 奈良県…天理市から少し奥へ入った、だらだらと続く 低山一帯付近、そこに必ずや 隠田が存在するはず、
エイスケはんには それを目でしかと確認する仕事を頼みたいねん ああ。
エイスケ「しかし・・・その隠田で摂れたコメを酒造用に回すってのが計画なのやろ？ けど…その獲れよるコメってのは、要は《非合法の闇米》やろ？使えへん悪手やとワシは思うが・・・」
エイスケはん アンタ、このワシ ナメたらあかんデ（嗤）ンなこと とっくに！想定の範囲やからヨ。
・・・アルねんて、表に出せない 闇のコメを…一挙に 《表の世界に引きずり上げる 名案が♪》
『おい ワシ、ちょっと旅に出るでぇ。１月ぐらい 連絡もせえへんけど、まぁ心配せんといてくれヤ』
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次回 参ノ弐へと続きます
洋食屋を開いてたリクめの祖父、曾祖父の息子ですネ、そのジイさんから 幾つもの逸話を聞いていたのですが、
その中でも 象徴的な、「戦後の動乱期」の逸話を書かせていただきます。
曾祖父ですが、ジイさん曰く『寡黙で めったに怒ったりもしない静かなヒトやったが、かなり…謎の多いヒトやったデ』とも。。。
戦後 出身地である丹後半島の宮津の町で 「針灸」の看板を掲げ そこそこ患者さんを抱えていたらしいと。
目立たず、静かに静かに 日々暮らしていたようですが、ただ・・・「そうなる」までには、かなり数奇な半生を送っていた御仁でしてネ・・・
生家の稼業は 代々で、丹後半島が「丹後ちりめん」の生産地だったゆえ、和装が当然だった時代の、今でいいますクリーニング屋さん 《洗い張り 湯のし》を家はしていて、
曾孫であるリクの代で、遂に故郷は「捨てた」。。。
曾祖父…《エイスケ》も、当然 その家業を継ぐ筈だったのが・・・青年期にさしかかった時期に 日本全体が被ったのが歴史でも有名な『昭和恐慌』で・・・
読書好きだったエイスケは、マルクスだレーニンだって…要は「共産主義・社会主義思想」にカブレちまってからに・・・
『こんなド田舎に居てられっかいナ！！』って 書き置き残して故郷の家を出奔・・・京都市内の 共産主義者のアジト「セツルメント」に出入りする事に。。。
当時の共産・社会主義 過激派らのｱｼﾞﾄ
でネ、イキナリ…当時の闇の歴史に触れるンですが…若かったエイスケってのは、当時の「アカの連中」組織における いわば《鉄砲玉》で・・・
アカ集団の活動資金捻出のためって名目で・・・時代劇用語で《世直し》・・・ハヤいハナシが【 押し込み強盗 】だヨ！お立合い！ ＠＠；・・・ロクなモンぢゃない（－－；
ある意味…港のリクを産み出す要因なのかも（＾＾；
当時のアカ連中の思想では、お金しこたま稼いでルってそれダケで「フラチなるブルジョアジー、プチブル」だから。。。
アコギな質屋だの、繁盛してる商店とか、寝込み襲って『カネ出さんかいワレ』と・・・（－－； 鬼平のダンナにたたっ斬られてもモンクいえませんてば。。。
ホンで 曾祖父のエイスケ…遂に 関西一帯で《お尋ね者》になりましてン（笑） こりゃマジヤバいってンで、ぶっちゃけ汽車で東京まで 《逃げた》。。。
ンで、偽名使い 世田谷にあった 東邦化学純薬工業って、主に農業肥料用の「硝酸」それを製造する会社に 見習い小僧としてモグり込み・・・
硝酸は農業用肥料に欠かせないアイテムですが、同時に…「爆弾」それを作成する過程でも 無くてはならない重要コンテンツで・・・
考えりゃ 会社も被害者でおますだヨ…月給出して テロリスト育成（笑）雇ってたンでっから（＾＾；
で…労働の現場で蓄積した知識と技術をカンペキ悪用（笑）エイスケは テロリストにして《爆弾魔》にも成りまスて。。。
強盗行為自体は実行に至らず、死傷者も出さなかったそぉでおますが、ビル…たって、所詮は昭和初期の頃の 見栄えダケ西洋風ってダケの三階建ての建物に過ぎませんが、
その なんちゃってビル、土台事《吹き飛ばす》って…ンな荒業ブチかましましたエイスケ、東京警視庁にもマークされるって羽目に・・・
遊郭から朝帰り ボ～っとしていたらしい。。。
年貢の納め時ってゆ～のか？？…豊島区椎名町のソバ屋で ノンキにお昼ごはんとってたエイスケは、『刑事５名 制服警官１２名って大捕り物でとっ捕まってン』（ジイさん談）
さぞやキビしぃ 取り調べ・尋問…と…思いきや・・・一目見で 只モノではないって判る、訳あり風の刑事が…エイスケに向かって言うには・・・『な？（思想）転向せんかキミ？？』と・・・
『キミの技能を活かせる 恰好の仕事がアルのだ。ワルいようにはせん、転向しろよ な？？』って。
確証も無い 伝え聞きではございますが・・・
ジツのとこ、その現場は家族中でもダレも観てないから ハッキリとは判らんのですがネ、どぉも・・・そのヘンな持ちかけをしてきた人物って・・・
『隻手（片腕だったって意味）のヒトやったと聞いたよな気がするワ…』（ジイさん） なんか・・・かの有名な、満州帝国をウラで操った「日本のラスプーチン」こと、【 甘粕大尉 】では無かったかとも。。。
拒否すれば 即、特高警察に引き渡され、当時のセオリーとして、共産主義者、特に鉄砲玉の実行犯などは、取り調べって名目での激しい拷問とリンチ・・・
マジで 生きてシャバには戻れないってご時世でしたから当時は。『はい おおせの通りに従います』とエイスケ。
行かされた先は・・・ＪＲ中野駅の北口付近、今は中野サンプラザが建っているスグ横の公園、
1938年（昭和13年）3月に「防諜研究所」として新設。同年7月より特種勤務要員（第一期学生19名）の教育を開始し、
1939年（昭和14年）5月に同研究所は「後方勤務要員養成所」に改編、7月には第一期学生の卒業を迎え、
そして 1940年（昭和15年）には 正式に名称を【 陸軍中野学校 】とした…当時では その存在すら 一切 世間には周知されなかったという 最高ＭＡＸの極秘の「スパイ養成所」で・・・
はい…曾祖父エイスケは…イキナリ！ そこの「爆発物製造＆実行」科目の『教官』になっちまいましたとサ！！ ＠＠；
エイスケ自身よりも遥かに年上の中野学校教習生に バクダンの作り方と 仕込みの方法、それらをレクチャーするンですワ。。。
アカの爆弾魔が 一夜明けたら、陸軍の秘密機関で教官ってンだからアナタ・・・ぶっちゃけ 当時は「よっぽど！！」人手も余裕も無かったってゆ～証拠でおますだヨ うむうむ。。。
中野学校は 戦後 市川雷蔵主演で映画にもなっていて著名ですが、カッコいい映画での表現とは違い、
やがて始まった 太平洋戦争突入以後は、中野学校も次第次第に 余裕がなくなっていってたようで、
落下傘にて、今のﾍﾞｲﾙｰﾄ付近に着地して
昭和１９年には 遂に…教官職であるエイスケにも『スパイとして中東から北アフリカへ赴いてくれ』って辞令が交付。
エイスケの直系の ひ孫であるリクめが、なにかと中東とは仕事柄で縁が濃いのも なんか思うモノがございます はい。
因果は巡る…ですのかねぇ？・・・
で・・・正直、軍事スパイとしてのエイスケは、赴任した外地で 特出した成果を挙げることなく、２０年８月には 日本が連合国側に無条件降伏って、スパイ業としては終焉を迎えて。
日本に帰国するには苦労したらしいッス、北アフリカから船乗り継ぎ、大阪港に着くまでに １年半かかったのだとも。
かなりの苦労を経験し、福岡の博多港に辿り着き
「スパイ」は当時の用語で「間諜（かんちょう）」と呼ばれ、兵士は国際法で その身分を保護されリスペクトも受けますが、
間諜は、「武器を持ち前線で戦わぬ卑怯なる奴」って扱いですからネ、むしろ その存在自体を敗戦により「消された」とも云えます ええ。
戦後に「スパイ」が再評価されたのは『００７』以降でス
・・・そんな経緯で…故郷に戻り 針灸の仕事を始めたエイスケは 戦後の暮らしは抜け殻の如き、世捨て人の生活だったとも。
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朝鮮半島で南北の戦闘が始まり、敗戦後の占領下体制が段々と解かれた、昭和２６年の秋口、リクめの曾祖父エイスケを訪ねて来た人物が・・・
『エイスケはん…こんな片田舎で燻ってる場合とチャイまっせ。アンタに恰好の、いや…アンタのご先祖にも報いる為 やらなあきまへん！わたいアンタへの仕事依頼 請け負って来ましてん』
やはり元 京都のセツルメント仲間で、敗戦を契機にチャッカリ アカから資本主義者へ転向し、敗戦後の関西圏一帯で《ヤミ屋の大将》としてブイブイいわせてた人物《ソースケはん》が わざわざ宮津くんだりまで突然 訪ねてきて。。。
『へっ！警察も進駐軍も、とっくに篭絡済みヤ１怖いモノあらへん♪』
エイスケ「え？ ナンだすねんナ？？ でもワシもぉ…スパイだの間諜の仕事とか よぉヤリまへんデ」
ソースケ『そナ愛想ナイ事 云いないナ！話ダケでも聞いてンか、エエ話やデ ホンマに』
エイスケ「なるモンやナイがナ・・・スパイなんて。忘れられへんて！敗戦が決まったとたん 本国への一切の連絡方法遮断されて…せや、ワシの存在自体《無きモノ》にしやがってヨ、引揚げ船にも乗れへんで、何度も死ぬ思いして必死に日本に戻れたのヤ その恨みよぉ消えへんデ・・・」
ソースケ『まぁ…気持ちは判りまっけど、この通り！命は元気でアルだけエエやん♪ かつての仲間も 殆どは鬼籍に入ってまってるのやからヨ』
エイスケ「ワシに ナニさせよってのヤ？？ え？ソースケはん…」
ソースケ『ズバリ！…【 アンタの何代か以前、代々で世襲してた仕事やがナ… 】この家、エエ家やけどチト古いですわナ、建て替えの費用ぐらい保証されるデ この依頼は・・・』
エイスケ「・・・《代々世襲の仕事》・・・知っとったかアンタ…」
ソースケ『そう・・・各地を売り歩く《薬売り》とは隠れ蓑で…ウラ仕事というより、むしろ正体ってなら、アンタの家系…【 雑賀流の忍者 】それやん♪』
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ウチの家系は、有名な 服部半蔵とかって 伊賀流忍者集団の 徳川家家臣となった「御庭番」ではございません。
ある意味で《野良忍者》とでもいうか（＾＾； 戦国ヒーローとしてＧＡＭＥキャラにもなってます 鈴木孫一〈雑賀孫一）率いる 鉄砲集団「雑賀党」
その一員だったのですが、鈴木氏滅亡とともに、失職 野に放たれ、先祖はこの丹後の地にたどり着き、薬製造と販売 薬売りを稼業としてたのですが。
雑賀党時代の先祖は『おんな鉄砲撃ち』って説もあったりして…
でも…「その姿」は 世を偽るオモテの顔で…忍びとしての技術も習得してたらしい先祖は その技術をして、今で言います「産業スパイ」それをしてたいたらいいと。
雑賀忍者の特徴は ナンたって鉄砲が有名ですが、ジツはそればかりではなくて、
船を操る 海運技術と共に、当時の世での「経済分析」それが得意だったそうで ええ。
薬売りに身をやつし、各地の都会はもちろん 田舎の田園地帯を歩き回る。忍者としての訓練で、一歩一歩の「歩幅が」、常に一定の足取りでもって歩きます。
江戸時代初期より 関西圏では大阪の 堂島に、昭和１４年に機能停止するまで続いた《米相場 取引所》があり、。
相場は」「生き物」ですから、大豊作の年でも大損したりもあれば、逆に不作の年でも 作戦を練るなら 大儲けもありうるという、
それゆえ、米相場で儲けたい 当時の投資家筋らは 少しでも早く その年にとれる米の「情報」を求めました。先祖は 関西一帯でのコメの出来や 豊作不作それの情報ゲットに飛び歩いていたと。
付近に稲作の畑が在るならば、歩いた歩行数で 畑の面積が判ります。で、実っている稲穂の状態を観て そこの畑で摂れます「収穫量」を情報としてゲット出来ると。
有名な豪商 紀伊国屋文左衛門も米相場で儲けた１人
ナンでンな行為を？？ ってならば、それには当時の 今と異なる世の中の構造と流通が関係してましてネ。。。
日本史で習ったと思いますが、徳川の世が終わるまでの日本は「金本位制」でなく「米（コメ）本位制」でした はい。
お米が 本式の貨幣ではありませんが、流通で有効な「貨幣手形」として通用した時代です。
お百姓は 今でいうゼ金を 摂れたお米で納め、大名がそれを市場に卸し 利ザヤを得て、その原資が 家臣の武家の給与となる。
今よりも数十倍も 毎年秋のお米の豊作・不作は切羽詰まった深刻事だったンですネ ええ。
今でいう「大商社」が、「仲買人」として君臨していたのですが、戦国の世ではけっして公平とも呼べず、
徳川の治世になり、大坂・堂島では、宝永・正徳期から米相場が始まり、紆余曲折の末に享保15年（1730年）になって江戸幕府の公認を受け、堂島米会所を開いたと。
これが現物先渡し契約の無 公認の近代的な商品先物取引の始まりで。
ソースケはんは、曾祖父に『まあ 一杯ヤリながらユックリ話そやんか。ホレ、持参したデ、心配あらへん、カラダに負担が来ぃへん、上物の酒やあから♪ まぁ…合成酒には変わりあらへんけどナ…』
多くの人にとって貴重品だったお酒。食料さえままならぬ時代、ヤミ市には安価な芋や麦などの糖質を発酵させて造ったカストリ、燃料用アルコールを水で薄めたバクダンと呼ばれる密造酒を出す飲み屋が無数に立ち並んでいたそぉで、
バクダンにはメチルアルコール入りのものがあり、死者や失明者が続出したのに対し、カストリは鼻につく匂いはあるものの、中毒の心配がないため、新聞社や出版社が集まっていた有楽町界隈には、酒好きの多い作家や記者、編集者などの集まるカストリの屋台が林立していたそうです。
エイスケ「・・・ほほぉ…ゴッツぃ上物やなコレ…、エゲつない匂いも味もせぇへん、なんか日本の復興を感じさせるわナ」
ソースケ「せやろ♪ 来年あたりにはヨ、バクダンやカストリなんぞと無縁の、本物の《酒》が町の店頭に並ぶってワシは睨んどる」
ソースケはんは フト、遠い目をして・・・
エイスケはんは、京都から東京へと逃れて、陸軍中野学校の教官にならはったやん…イヤ、アンタの思想転向を責めてるのと違うデ・・・
ワシもナ、官憲、特高警察が怖いってより、…イヤになってナ。。。当時の共産主義セツルメント内部の《セクト争い》それやがナ・・・
つまらん事で対立しては、夜道で襲ってはドツき回すとか…組織内のリンチがいい加減イヤになってン ワシ。
『満州では エエ夢見させて貰ろたデ ああ…』
そんで、ワシ《満州》に渡ったんヤ ああ。日本人が多く入植した満州は寒冷の地であるのと入植者に青年層が多かったので、日本国内に比較して1人あたりの清酒消費量は2倍と言われててナ、
その為、日本国内より相当量の清酒を移入するとともに、満州国内でも清酒の製造を行ってたのやけど、ご存じのように、満州の水ってゴッツぃ硬水やん？ オマケに酒造適性の乏しい満州産米を使わざる得なかったこと、設備の貧弱な酒造場が多く腐造や火落ちなど品質に問題のある酒が後を絶たなかったこと、既成の日本酒は現地の極寒の気候では凍ってしまうことなどから、
酒には目が無いワシとても、飲む気が起こらん それはヒドいモンやったデ。。。
1940年(昭和15年)に日中戦争の拡大により原料米の統制が行われ、日本国内の清酒製造量が半減した為、日本国内からの清酒移出量が減少しました。この時期に新京の丸三工業株式会社にてアルコール添加酒の標準的な製造手法を確立し、1941年(16年)に満州全土の酒造場でアルコール添加酒の製造が実行に移されてナ、
混ぜ物入りの「新・日本酒」の誕生でおますだヨ…
このお酒は満州にて、第一次酒または第二次増産酒と呼ばれたのヤ。ジツはナ…このワシ、その事業に一枚噛んでいてヨ、今現在につながる資本の基礎を築かせてもらった。
で、次第に日本本土でも 米不足の為 ワシらがヤリ始めた 混ぜモンの酒造りを真似てヨ、アルコール添加酒が造られるようになったんヤ ホンマやデ？
化学実験室でこさえたに近い酒なんですが・・・
1941年(昭和16年)に太平洋戦争がはじまったことにより、日本国内でも米不足に拍車がかかり、1942年(昭和17年)に食糧管理法が制定され、酒造米も配給制になりました。
戦時下状況の中で清酒増産の為にアルコール添加酒の製造が酒不足の解消の近道と考え、醸造試験所で1942年に試験醸造を行い、同年55の酒造場で試験醸造を行ったのやけど、
アルコール味を残し酒の旨味やゴク味が乏しくなったため、甘み成分の増強を目的とした四段添加や、乳酸・コハク酸・クエン酸等を添加する補酸が大々的に行われてナ・・・
1944年(昭和19年)には、内地の全酒造場でアルコール添加酒が製造されるようになりよったのやけど、日本酒の純粋性と品質低下を招くとの批判があったので、大蔵省はアルコール添加酒を原則的に清酒三級として扱うように通達を出したんヤ。
な？？笑ってまぅやろ？？栄えある 神国ニッポンがヨ、満州の地でワシら悪党とかが、苦肉の策でこさえた《いんちき酒》・・・
それを 本土の方で真似よって、酒飲みらの不満を必死で押さえてたって♪
・・・で…いよいよハナシは戦後になるんやけどナ・・・
太平洋戦争の日本の損失ってエイスケはん 考えたことアルか？・・・
総額で約497億円(現在の貨幣価値で約140兆円～150兆円）人的被害も1937年(昭和12年)の人口を100とした場合)、人的被害が約310万人(厚生省援護局より)あり、1945年(昭和20年)当時の日本の人口が約7200万人で総人口の約4.3％が犠牲になってんのヤ ああ。。。
実際、空襲により日本の主要都市はほとんど焼け野原となりよったし、、農業生産に至っては1945年(昭和20年)の米の収穫高は1944年(昭和19年)の約半分近くまで減少し、水産漁獲高については1947年(昭和22年)の時点で戦前の約6割までしか回復してへん、よくもまぁ…今の今まで飢え死にせんかったとしか。。。
さあて いよいよ問題の核心部分に突入ヤ・・・こうなると当然日本酒の生産どころではなくなり、1935年(昭和10年)の時点で日本酒の生産量が約407万石だったのが、1945年(昭和20年)時点で約84万石まで減少しよったからナ、
酒蔵の数も1930年(昭和5年)に8000場以上あったものが、昭和初期の不況や戦時の企業統制、空襲の影響で約3800前後まで減少したものナ。
日本の敗戦で、満州でのニセ酒なんかとは縁切りだと思ってワシ帰国したのやけど・・・
太平洋戦後の1945年(昭和20年)以降、兵士の復員や農業生産量の減少、流通網の破綻等により、日本国内では、国民の日々の食事分すら無い程、深刻な食糧難が起こってたからナ ああ・・・
特に酒造業は前記の通り壊滅的な打撃を受けており、空襲などで焼かれた酒蔵だけでも223場、昭和20酒造年度の全製成量の17％の酒が失われ、杜氏や蔵人の戦死者も多くあり、その上原料となる米が絶望的に不足してて、酒造りどころでは無かった訳やて ああ。
『日本各地で、目を覆うばかりのニセ酒 闇酒が蔓延してた』
結果どないなるか？？・・・当然の結果ヤってワシは考えとる、兵士の復員などで飲酒人口が増えたにも関わらず、酒類の供給量が追いつかなかった為、闇市にてメチル、カストリ、バクダン等の密造酒が大量に横行しはじめてナ。
言い訳はせぇへん、このワシは あくどい闇屋の大将ヤ、でも…チョっとだけ言わせてくれ・・・
このワシかて 本音の部分では《闇酒》なんぞウリとぉ無かったデ？ メチルなんか戦争中に石油燃料の代用に製造されたエチルアルコールを水で希釈したものにメチルアルコールを加えて、人が間違えて飲まないように桃色に着色したモノやん！酒への渇望から手を出して失明したり死亡したりする人が出て当然ヤ。
カストリは、酒粕から造った粕取り焼酎とは別物で、密造の粗悪な芋焼酎の事を指し、飲んだ後のコップが脂ぎって汚れるのが特徴・・・
バクダンとは、戦時中の航空基地などで使い残された燃料用アルコールを活性炭で脱色し水で薄めたもので、即席焼酎などと呼ばれて販売され、失明、死亡率が最も高いって。。。
・・・ぶっちゃけ…【 毒やデっ！！ 】アホらしっ！ ダレが売りたいかって！こんなロクデモない飲みモンなんぞ・・・
だが…逆の視点で物事考えてみようヤ・・・毒であることを判ってても…《あえて》…毒でもエエから それとか飲んで、辛い今の現実を忘れたい・・・
酒飲み以外でも…戦前まで 深窓の令嬢やった娘はんが、今日にはガード下で パンパンしてるのだっせ！この国は《破壊の極み》せやろ？
そういうイチ国民、労働者の《心情を》…政府や役人は１度でも考えたことアルのやろか？？・・・
ココロならずも・・・ホンマやデ？ ココロならずも、ワシは そんな庶民の渇望の声に 応じざるを得なかったのが正解なのヤ。
闇屋の倉庫の雨戸の扉を 朝の５時やデ！…《サケあらへんのか！？ サケ出したらんかい！！》って…毎朝叩かれるのやデ？
エイスケはん 知ってはるやろ？ ワシらのよな 闇屋稼業を中心として羽振りの良い連中を指して《戦後成金》って呼ばれてるわナ？
でも 判ってる・・・こんな繁栄は イってみりゃ《時代の仇花》それに過ぎんデ ああ。ワシのツキも いずれ早々に消えよるやろって ははは。
でもナ…ワシなりに、悪党なりに…ワリと真剣に考えてることアルねん、数多くの健康被害を生み出し、世の治安も悪化させた【 その責任をとる事業 】・・・
ワシ個人としては、尼崎にナ、アルコール中毒とアルコール健康被害者のための 専門病院設立したねん ああ。・・・方々にワイロ配って回ってヨ ヒヒヒ♪
でも、そんなんで罪滅ぼしだとは思っとらへん、要するに この問題の核心は・・・この日本に【 戦前のような 真っ当な《酒》それが再び流通出来るようになる 】
それこそがなによりもの特効薬、ストレプトマイシン並みのワクチン効果やん！
エイスケ「・・・なぁソースケはん、概要は理解したけどヨ…具体的に…アンタ、このワシに ナニせぇって、言わはるんヤ？？」
この敗残の…忍者の子孫にアンタはナニを？？…
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ソースケはんが帰っていったあと、曾祖父エイスケはしばらく、応接間の座敷に座り考え込んでいたそうで・・・
傍らには やはりソースケはんが手土産で持参した 米軍基地ＰＸ放出品のウィスキー「ホワイトホース」の瓶が。
・・・こんな、ホワイトホースなんざ、米国本土では 安物ウィスキーの代名詞って 外地に居たワシは判ってる。
だが・・・哀しいかな この敗戦国 今のニッポンでは、この安物ブレンデッド・ウィスキーが成功者の愛玩品であり、庶民層の垂涎の的・・・
要は…戦争に敗退するってのは、それほど惨めで《貧しく》なるのだ・・・低ランクの洋酒をさも有難がり、家畜のエサ用に回すはずの小麦や雑穀を戦勝国より恵んでもらい パンとか作り優雅になったよな幻を喰ってるのだ この国の今は・・・
ソースケはんはさらに述べます・・・
これはエエ知らせって割り切ろうと思う。あんナ？ 福井から始まり 富山 石川 そんで新潟ナ、日本海沿岸に既存した《酒蔵》空襲で焼けてまったとこ意外に多いのヤ ああ、
が…その酒蔵で赤紙で徴兵されるまで働いてた 酒造りの《杜氏》…かれらの多くが戦死回避して 続々帰還を果たしてナ♪
だが 肝心の…再び働く 酒蔵がもぉあらへんやろ？せやからヨ、ワシも陰で働きかけたのやが、京都 大阪 兵庫って、老舗の酒造メーカーが 職場失った杜氏らを 雇い入れるって、運びとなってん。
しかし・・・ジツにもって 大きな問題が立ちふさがった・・・【 原料の米ヤ 】・・・
横ヤリが入った・・・農林省とその傘下の食糧庁ヤ…《まだまだ国民全体に十分な量のコメは行き渡ってはいない！その状況の中で、貴重なコメを酒造りに回そうとは何事だ！！》って理屈でナ。。。
まぁ道理やけどナ…コメは事実として《国民配給制》、身分を証明するには《米穀通帳》がなにより。この状態は まだまだ１０年は変わらんと思う。
『本格的戦後ﾆｯﾎﾟﾝの酒造り、闇米には頼れんしヨ』
（ソースケは 急に、ギラついた目つきに変わり・・・）
幾度と修羅場くぐったワシやデ、そんなんでメゲるかいナ！！ そこで・・・ワシらが 目を付けたのが…【 この関西圏一帯の 《隠し田》それヤ！ 】
非合法、極秘の隠し田 それがあった！！
通称「隠し田」 隠田（おんでん）は、農民が年貢の徴収を免れるために密かに耕作した水田のことで 隠田は「かくしだ」あるいは「いんでん」とも読み、現代仮名遣では「し」を補って、隠し田とも書く。忍田（しのびだ）とも言うが、同様に忍び田とも書く。他に隠地（おんち）、隠没田（おんぼつでん）もいうが、これらも同義語。
日本の律令制の時代から既に存在した違法行為で、為政者から見れば脱税にあたるため厳しく禁止されており、発覚すれば土地は没収（没官）の上で、追放に処される程の厳罰がとられた。隠田は通常人の目に着きにくい山間や谷間に開墾された。太閤検地などを通じて摘発が試みられたが、江戸時代になっても新たに隠田は開かれ、一部は地租改正まで残存した。これらの田畑で耕作した収穫物を（納税せずに）全て自身の物とする行為は「作り取り」と呼ばれた。
土地以外の者が訪れない 山の段々畑、そのもっともっと奥の土地に、大概そういう 隠田がアアリよんねん。
心配あらへん 事前の斥候で おおよその場所は突き止めておるよってナ♪ 奈良県…天理市から少し奥へ入った、だらだらと続く 低山一帯付近、そこに必ずや 隠田が存在するはず、
エイスケはんには それを目でしかと確認する仕事を頼みたいねん ああ。
エイスケ「しかし・・・その隠田で摂れたコメを酒造用に回すってのが計画なのやろ？ けど…その獲れよるコメってのは、要は《非合法の闇米》やろ？使えへん悪手やとワシは思うが・・・」
エイスケはん アンタ、このワシ ナメたらあかんデ（嗤）ンなこと とっくに！想定の範囲やからヨ。
・・・アルねんて、表に出せない 闇のコメを…一挙に 《表の世界に引きずり上げる 名案が♪》
『おい ワシ、ちょっと旅に出るでぇ。１月ぐらい 連絡もせえへんけど、まぁ心配せんといてくれヤ』
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次回 参ノ弐へと続きます
