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 その男 元・軍事スパイ (参ノ弐)


 エイスケが訪れたのは 奈良県の 天理市。

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奈良県北中部に位置する。現在は市域を東西に西名阪自動車道、名阪国道が貫き、南北軸と交わる交通の要衝となっています。

東部は大和高原等が広がる山間地であり、西部は奈良盆地に含まれる平坦地、 市の中心部には石上神宮、大和神社や天理教関連の施設が集中しており、宗教都市としての性格を持ち合わせ、

西部は、近鉄や西日本旅客鉄道の沿線であり、住宅地として開発が行われ、大阪へのベッドタウンとしての性格を持ち合わせる。

都市としては、複数の顔を持ち、同市内でありながら、街の雰囲気、住民の指向は違いを見せています。

但し、「天理市」と制定されたのは 1954年でありましてネ、曾祖父エイスケが訪れた昭和26年の頃はまだ、

山辺郡丹波市町・朝和村・福住村・二階堂村・添上郡櫟本町・磯城郡柳本っと これらの市町村に分かれておりました はい。

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紳士ハットに 糊の利いた背広上下、エリート風には見えずとも、堅気の会社に勤める営業マンのスタイルに 身をやつしたエイスケは、

櫟本(いちのもと)駅という 桜井線(現 万葉まほろば線)駅で下車した エイスケは、それとなく、スパイ業務で築き上げた能力を駆使して 駅前商店街の空気を読んで、

やがて1軒の コレって特徴も無い 食堂のノレンをくぐって。「いらっしゃい ナンにひまひょか?」「洋食のライスカレー頼ンまっさ」「昼間っから精つけはりまんナ旦はん(笑)」っと軽口を交わし。
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コレっていう特徴も無い駅前食堂、時代の流儀に加え、この土地の習わしか? 真昼間 ランチタイムの終わりかけ時刻なのにかかわらず、店の 男客らは ごく普通にアルコール類をクチにしていた。


エイスケは抜け目なく 店内を見渡す…間違いない・・・メニューの短冊が並ぶ 店の壁の上方部分に、《当月の信者活動方針》の書き写しが さりげなく掛っている。。。
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「おまっとさん」運ばれてきたカレーの皿をパクつきながら、店内に居た 2,3組の工員労働者らが感情を払い出て行ったのを見届け、

新聞片手にタバコふかし ヒマそうにしている店のオヤジへ、

「チョっと…お尋ねしてもよろしか??」「なんだすねん?」

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エイスケは…「ご主人はんとこも、アレでショ?《天理教のご信者はん》ですわナ?」

主人「はぁ…先々代からの信者でおますけども。。。いちお~地区の班長やってますねんが それがなにか??」

エイスケ「やはり、ココいらの土地は 皆さん天理教信者の方が多いですか?」

主人「まぁネ、奈良やからネ、お寺さん、神社もよぉけありますが、やっぱ、天理教は格別、お膝元やし ウチとこのよな小商いは、殆どのとこが天理教新興してますわナ」

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 (売り上げの為 天理教を利用しているようだが…まあ根本は 実直な働き者の食堂主人のようだ。このヒトに当たりつけてみるとするか・・・)


エイスケ「ご主人 わたいねぇ…戦地から必死の思いで帰国して…親兄弟は皆 空襲で散り散り…焼け野原の祖国見てスッカリとヤケになりましてン、荒んだ暮らししとったのでっけど、天理教の《この世は神のからだ》、《いちれつ兄弟姉妹》の教えに救われましてン ええ」

主人は急に目を輝かせ「そうなんでっか♪ほなわたしら お仲間でんナ♪やあ今日は目出度い目出度い♪」


エイスケ「まだまだ新参の教徒に過ぎんのですが…厚かましいの承知で、ひとつ、先輩の信徒はんにお願いがあるのですが・・・」
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主人「ああ♪ボクで出来ることならなんでもしまっせ♪わたしら兄弟や♪遠慮なく言うたっておくれやす」


エイスケ「この街にはチョっとした商用で来たのですが おかげさまで終わりそうなんですが、で…このまま直帰するのもナンやし、ひとつ・・・《天理教の教会本部》そこ訪れ 拝礼をささげたいって思ってるのですが、なんせ…知り合いも居りませんし・・・」
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主人「おおそれは殊勝な心掛けですやん♪ まかせなはれや!袖すり合うもなんとやら、ボクがその仲介の労 とったりますワ♪」

エイスケ「でも、ご迷惑でしょう?ご商売もあるし・・・」

主人「いえいえ、明日は定休日なんですワ。店のクルマでホンの20分ぐらいです本部は。気まぐれに訪れたのでは入館叶わない場所ですが、ボクが連れ添ってればすんなり入れまっせ♪」


この親切な食堂の主人の好意をまんまと利用する形ですが、エイスケは「まんまと」、潜入を目指す場所への近道をゲット出来て。


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翌日 まだまだ国民が自家用自動車なんて 手が届かなかった戦後の時代に、
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この好人物の食堂の主人は 「日野ルノー」って、今のニッサンの母体社とフランスのルノーからの技術移設で完成したクルマを所有していました。

田舎の食堂のオヤジと 侮れない、かなりの資産を有する人物と思えましたそうで。


しかし 天理教・・・同じ信徒であるって肩書は大きい…フリで訪れたダケの お客に過ぎないエイスケを この人の好い主人は 休日をつぶして 教会の本部までエスコートしてくれるという、

改めて エイスケは、地方宗教の ヒト同士の繋がりの強さを実感したそうで ええ。

 (すみませんご主人…アナタを利用するツモリはナイのですが、本丸へ近づく策、お許しください・・・)

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         昭和26年頃の 奈良の田舎道をクルマは進み…

僅かな時間のクルマでの道中でしたが、天理教の本部の建物が見えてくる頃には、エイスケと食堂の主人 田宮文三は、10年来の親友のように打ち解けて。

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見えてきた 天理教の本部建物・・・(デカいな…)想像してた以上に、宗教団体としての資産額は多そうだ。。。


『あっ田宮さぁ~ん♪』 『どうも田宮さん、こないだは法事の仕出しのお弁当でお世話になりました!』ふむ…地区の班長、世話人ってのも、バカに出来んナ、

本部会館の職員とか、宮田を見つけるときまって、笑顔で話しかけてくる。
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本殿にも案内され、「真柱」と呼ばれる 教祖一族血縁者はさすがにムリで、教化部長という人物が対応に出てきて、

エイスケは、一夜漬けで覚えた 天理教の宗教作法でなんとか 拝礼をこなして。


田宮が満面の笑顔で近づいて来て「よろしおましたわナ♪ せっかく来やはった甲斐がおましたナ♪ 疲れてまへんか??建物の中に《喫茶部》アリますよって、寄って行きまひょヤ」

建物の北西の方向の奥に、やけに だだっ広い 一角があり、そこが喫茶部のようでしたと。7割ぐらいの 客の入りで。

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田宮「コ~ヒ 飲まれまっか?食事モノもおまっせココ。オゴ」ますワ ナンでも頼んでください♪」

エイスケ「いえそんな!連れて来ただけで有難いのに…この上 お代金までなんか!」

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ウェイトレスの若い娘がコーヒーを運んできました。 アカギレの季節には まだ早い、ビタミン不足か?若いくせに爪先部分が汚れているのが少し気になったエイスケ。


田宮はニヤリと笑い、「なあに♪心配おまへんがナ。ココのテーブルに勘定書きの紙、持ってくるようなアホなウェイトレスはおまへん。あのネ・・・」
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       「あのウェイトレスのコら、ボクが給料払ってるのですワ」


・・・エイスケはん、教えたげますワ。ジツはココの喫茶部ですが、《ボクんとこの経営》云うなら《出店》ですワ ええ。

土日も祭日も関係なく、日本各地より 毎日、続々と 全国の天理教信者の団体が詰めかけて来よりますのヤ。

正直…ゴッツい利益です ええ。信者らに提供する お昼の弁当、正直 笑いがとまりまへん♪

エイスケはんと出会えた 駅前のあの店、アレはもぉ完全に《余芸》ですワ。じいさんの代からの店、遊んでるのもナンやから仕方なく続けてるというか。
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乗ってきた あのルノーのクルマも ココの売り上げのおかげですワ。ほぼ毎日…最小でも 30食分の 昼の弁当仕出し、ね??一心不乱に信じる宗教の実践活動してればイイ事訪れるんですよ♪

 
田舎の地方宗教のチンケな喫茶部と内心でバカにしていたエイスケですが、意外や クチをつけたコーヒの使ってる豆が 上等の アラビア・モカだったのに驚きました。
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          大阪や京都よりも良い豆使っていやがる・・・


『おっ!これはこれは! 藤本センセやおまへんか!ご無沙汰してます田宮です♪機嫌良ぉしてはりますか?』座っている椅子からバっと飛び上がり 90度のお辞儀をする田宮。

その田宮に 最敬礼を受けている人物っていうのが…コレがジツに意外・・・まだ 二十歳そこそこであろうと思える《うら若い女性》で。。。
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その女性はポっと頬を薄く染めるようにして 恥じらいながら、『イヤですワ 田宮様…先生だなんてとんでもない…まだまだ《素養部》の新入りのインターンに過ぎませんものワタシは』

田宮「いやいや!聞いてまっせ♪ 来期になったらスグに、新設される《保母養成所(のちの天理大短期大部)》そこで教鞭に立たれる予定だと」

『そんな…まだ あくまで内定の段階ですから。それでは…お先に失礼いたします では…』
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やや上気したカオつきでテーブルに戻った田宮は、

田宮「あの方…東京の日大から、教団経営の 天理大学文学部に教授として赴任なさいました 藤本教授の お嬢さんですねん♪ エラいこと才媛 まだ十九歳ってから驚く!わたいらとはオツムの出来が違いますナ。」

エイスケ「ほほぉ…なっかなかの べっぴんさん 東京のオナゴはんは 垢ぬけてますナ。」

田宮「あとセンスもよろしい!ココの喫茶部にも新メニュー、あの方のアドバイスでもって始めました、東京のデパート食堂で大流行の《お子様ランチ》よぉけ儲けさせて貰ってますワ♪」
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丁寧なお辞儀を田宮に返し 遠ざかっていく その女性を見送りながら エイスケは・・・


 【 案外と早く実物見れたナ。。。アイツが…《藤本 佐●》だってかい。ウマいこと上品に 世間ダマくらかしてやがる・・・ 】

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『せっかく 大きな契約を取り付けたと思ったら…思わぬポカが生じて、しばらくこの地に逗留することになりよりましてン…』って触れ込みで、
                
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エイスケは駅前の商人宿に逗留し、昼食時とかには毎日、田宮の食堂へと通う日々が始まりました。

モチロン田宮はウェルカム♪で、食堂を訪れる 地元の他の客にもエイスケを紹介しましたそうな。その大衆食堂の客の   大半が やはり天理教信者だという構造も把握しましたそうな。


エイスケは この町での身分は、神戸にある小さな商事会社、そこに勤める 水道ポンプの部品を売り込み歩く営業マンという肩書で。
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時代的に、26年ごろから、農作業の電動化、街灯電柱から電源を拝借し、農業用水の池から 各田んぼに必要な水を 自動で需給するという 当時としては目新しい新機軸で それを売り込み歩く 当然に田園地帯を回っても不思議はない。

ソースケから依頼を受けた業務・・・『隠し田はどこにあるのか?』『誰が その闇米を仕切り、どういう《卸し》が実行されているのか?』それらを中野学校仕込みのスパイ戦略で探りましたそうな。。。

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最初こそ 山間部をコマメに歩き回るエイスケを怪訝そうに見ていた土地の住民らも、数日も経つなら、《班長の田宮さんの友達の天理教信者》ってニセの肩書がモノをいって、スッカリと地元に溶け込んでいる感じとなったそうで。

大雨でない限り毎日を、修行の山伏マッサオな距離をエイスケは歩き回ったが、そこは歳は取っても 元・軍事スパイにして《忍びの末裔》日に日に昔の健脚の勘を取り戻して。


依頼人であるソースケはんとは、中間連絡として、地元の 櫟本ではマズいので、《二階堂》という土地の さびれた飲み屋で落ち合ったそうで。
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ソースケ「どないヤ?エイスケはん、例の 隠田は見つかったか??」

エイスケ「ああ…ぶっちゃけ おおよその場所は察しがついたワ。いよいよの実行は、コメの取入れが完全に終わってからにした後がエエって思う。」

ソースケ「せやナ…逃げ隠れ出来へん ブツがあがったトキこそが勝負やナ・・・」


エイスケはフト ため息をついて・・・

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      この世の最強強者は 百姓なのかも知れん・・・

・・・しっかし…ぶっちゃけ、百姓らの《ワル知恵》ってハンパあらへんわナ。ジツにもって巧妙に、徳川の世から 明治大正って時代、まんまと政府役人を騙し、隠し田を温存させやがった・・・

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ソースケはんナ…この一帯には 最高峰の国見山から高峰山ってのを中心に、500から600mって、低山なんやけど、行楽登山するにはチト難儀な山とかが一杯ある。登山道も無い、いわば 外から来た人間を排斥する山地ヤ ああ。

考えよったデ 当時の百姓・・・天理市側から見えてる その高峰山とかは《あくまで片面》なんヤ ああ。

江戸の当時からズっと続く慣例で、テッペンの山頂から先の《向こう側》、農作業とかを管轄する 行政区分、それが 天理から他へと替わりよるんヤ・・・

要はナ、区分が替わる反対斜面への詮索や調査の権限は、天理市の役人には与えられてないって事、本来担当の他の市かてヨ、ンな面倒な作業したくもナイやん。
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・・・あったデ…ああ ウジャウジャとナ 隠田が…1つ1つはごく狭くて小さいのヤけども、チリも積もれば…だ。あの一帯 全部で乱暴な計算だが・・・
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およそ・・・あの一帯の隠田全部で《四千石(こく)(コメ6千トン)》近くなりよるのとチャウか? 再開する酒造りの 初年度分としては充分過ぎるやろ?
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ソースケ「あんじょう頼むデ、仕上げはワシとかがキッチリするけん」


・・・でも…ソースケはん、どぉもワシ、スパイ時代のワルいクセが抜けへんでナ、心配せんでエエ、仕事はキッチリ終わらせるよって。アンタのせいとチャウのやが、ぶっちゃけ この仕事 チト《役不足》だったかも。。。

調査の途中で おもろいモン…めっけてしもぅてナ、と同時進行で…ジツに興味深い とある 一時世の中騒がせた人物と偶然に遭遇してナ、

自分なりに分析した結果・・・それの2つは なんか…執拗に絡み合っている(今でいう リンク)気がしてならんのヤ。

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      互いの尻尾を噛み合う双子の蛇『ウロボロス』の如く…

ソースケはんに迷惑が及ばない範囲で、ワシは、ひとつこの《謎》を解いてみたいと思ってるのヤ ああ。。。

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 1950年9月22日午後2時ごろ、日本大学会計課員・木下茂と用務員・金山忠一が、富山銀行神田支店、千代田銀行小川町支店から日大職員100余名の給料190万円を

現金で受け取り、日産「ダットサン」で学校に運んでいるところに、待ちうけていた男性が「へーイ、ストップ!」と叫んで停車させた。

 停めたのは日大運転手・山際啓之(当時19歳)で、車を運転していた佐藤清樹とは同僚であった。

佐藤は「何の用か」と気軽に車を止めたが、いきなり襲われたという。山際はジャックナイフで同僚を切りつけ、脅しながら大手町労働省前まで運転させ、給料入りのボストンバッグを強奪、3人を車から降ろして、そのまま逃走した。

 山際は車を乗り捨て、まず東京駅へ向かった。途中、タクシーの乗りこみ、品川駅に行き、国電に乗り換えて有楽町に向かい、映画を見たり、洋服をしたてたりして時間をつぶした。
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      逮捕後 連行される 主犯の山際

午後7時ごろ、駅前の喫茶店「アマンド」で恋人・■本●●(当時18歳)とおちあっている。2人はその後、目黒に向かい、旅館「紅葉」で一泊した。

 翌朝、新聞を見てみると、昨日の現金強奪事件の記事があり、2人の顔写真が大きく出ていた。2人はいったん別れ、●●は品川区大井の会社員宅の八畳間を「アメリカ人二世」というふれこみで間借りした。

夜になって●●が連れ帰って来た山際は会社員に「私はCIEに勤めている。今日は大阪から着いたばかりで非常に疲れているから・・・」などと英語を交えて話し、12時頃には就寝した。


 翌日、2人は朝からビールを飲み、ふざけあっていた。部屋を貸した会社員の妻(当時28歳)は新聞などで日大給料運搬車の襲撃を知り、2人がその犯人だと思い通報した

 24日午後5時ごろ、2人はここで大森署員に逮捕される。
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   「オー、ミステイク!」このトキの山際の捨てゼリフは 当時の流行語にもなった。
 
山際はこの時、両手を広げ、●●に向ってこう言ったという。警察に連行されてからも山際は片言で二世を装い、●●も「この人は二世よ。日本語なんてわからないわ」とうそぶいた。2人は2日間で190万円のうち30万円を使っていた。

これが当時の《アプレゲール》(戦無派)によって起きた『日大ギャング事件』もしくは『Oh ミステイク事件』と伝えられている。


「なあ? エイスケさん アンタ歳ナンボや?」 「もぉ 52 ぶっちゃけジジいですワ 双子の孫が居てます」

「ンな! まだまだ老け込むにゃ早いワ!アンタ見込んでちょっと相談がアルのやけど・・・」っと食堂の主人 田宮が。

「なんだすねん??」キツネうどんを啜りながら、答えます。


・・・なあエイスケはん…アンタとワシ、知り合って間もないが、最初に少し話しただけで、アンタって人がここいらの土地には滅多に出よらん、エラく賢い頭回転する人やって判った ああ。

な?神戸の商事会社…辞職して、ぶっちゃけ、ココの土地に定住せえへんか?・・・探しとったねん、ああ。こないだお連れした 天理教教会の喫茶部あるやろ?

経営者であるワシが常駐してへんのがワルいのかも知れんが、どうも…売り上げとしての量が大きい割には、反対に利益がいまひとつ挙がらないのヤ うん。。。


考えたくないが…従業員の誰かが 売り上げピンハネしている可能性も・・・勝手やとは思うが、ワシとしてはだ…エイスケはん アンタのよな目端が利く すぐれた人物に喫茶部を仕切って欲しいって そぉ思ってるのヤ。

やっぱヨ…全国は広いけど、同じ天理教信者が暮らすには、ココの土地、天理市内で暮らすってのが一番だって!天理教が在り続ける限り なにかとウマ味も多いデ・・・賭けてもエエ。急がない ひとつ真剣に考えてみてくれへんか??

24年には4年制大学 天理大も出来た。この都市はこれからもドンドン 人口増えて発展するデ。喫茶部をアンタがチーフで 独立させたって構わん。
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      『田舎食堂のオヤジで終わりとぉナイのヤ!!』

いつかワシは 喫茶部を…東京の三越や、大阪心斎橋の大丸の大食堂・・・アレらに負けないモン 作り上げたいのヤ!な??


 (・・・困ったわなぁ…これ以上 田宮はん騙し通すのも なんか罪深く思えてきたワ・・・)

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隠し田の件は 手筈が見えてきた。 で次は・・・ずっとワシのココロにひっかかってた、《あの事件の真相》をハッキリさせんことにはモヤモヤがいつまで経っても取れへんからナ。

エイスケは商人宿から一張羅の洋装に着替え 町の方角へ出かけました。昭和26年当時の地方の午後八時過ぎっていうなら、今とは大違いで、
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OL仕事にせよ 若い女性が独りで歩いているなんて考えられず、マトモで堅気の暮らしの御仁らはとっくに家に戻っている時間。

町の繁華街をウロついているのは決まって・・・遊び人 博打うち チンピラ そして、昭和33年に 禁止法が施工されるまで、26年当時では、いかがわしいながらも、違法行為ではなかった《街娼》・・・

その御仁らのみが 夜の街を徘徊していた時代なのでした はい。

         
駅前の大通りから 一歩外れた 街灯もまばらな路地、そういった所には公式のように大抵、夜泣きソバ、戦後代々的に増えた 中華そばの屋台が出番っていて、
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それを利用する客層のメインは ドコの町でも 街娼らが小腹を満たすための需要が大きかったとも。

おおっぴらには 遊郭などは無い  天理の 櫟本(いちのもと)の町ですが、魚心あれb水心…とっぷりと夜ともなるなら、

蜘蛛の巣のような路地裏から、客の袖を引く 街娼らが這い出してくるって図は 他の都市らと同じでした はい。


エイスケが屋台の脇を通り過ぎようとすると、暗がりから…「ねぇ 旦那ぁ♪」っと、オンナの鼻にかかった誘いの声がかかります。
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振り返って見るならば、暗がりに立ち エイスケを誘うそれは、正直…田舎娘マル出しで大根足、《化粧へたやなぁ…》白粉を塗りたくった 洋装ドレスの まだ若そうな街娼で。

「ねえ旦那 遊んでかへん? まだ今ならチョンの間で済むエ、も少し経ったら一泊の値段になってまうから 今がチャンスや どないですか??」


 (うむ…特出するほどの器量ではナイが、このネエちゃん、快活で交友範囲も広そうだ。情報手繰るにゃ こういうオナゴが恰好かも)


エイスケは「せやナ、久しぶりにオナゴの肌が恋しい気もしてるワ。けどナ姐さん、ワシ、シケたカビ生えたよな連れ込み旅館はイヤやデ。サケ飲めて ある程度の料理も出るようなキチンとした旅館か 待合じゃなくちゃイヤや」

街娼は「あ せやったらエエとこわたい知ってるワ♪ カストリよりズっと上等なサケ出してくよる料理屋旅館 行こ行こ♪」

羽振りの良い上客だと思った街娼は キラキラ輝く目でそういったそうな。。。

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旅館で、オンナが風呂を使っている間 エイスケは手酌で出された(一応)灘の日本酒を呑んでいたと。

 ・・・けっ! どこが日本酒やコレ…混ぜ物だらけの《三倍酒》舌が曲がりそうな味やがナ。だが哀しいかな コレが今の日本の現実ヤ・・・

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「お先にぃ お風呂いただきましたぁ♪」先ほど誘いの声をかけられ この旅館へと案内してきた街娼、名前はアユミ、気持ちよさげな声をエイスケにかけて。

「エエ湯加減でしたエ 旦さん入ってきなはれや」 「いや…チト風邪気味やもんでよしとくワ」(フンっ入浴で座敷空けてる隙に、ガマグチから札抜かれる程の マヌけとチャウわい…)

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「ほんなら、早よ することしてしまいまひょや 旦はん」

エイスケ「いや…それがナ、さっきは酔ってて ついウッカリ、テメエで忘れとったのやけどナ、ワシ 持病があって、うん 糖尿病やねん。もはやチンチン ピクリともせんの忘れとった カンニンなアユミちゃん」

アユミ「なんだったら わたいが《クチで》息子はん元気にしたりまひょか?」
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エイスケ「いや それには及ばんて。でもホレ、この通りチャンと《花代》支払いますけん 許したって な?」

アユミ「エエのん??・・・することもせぇへんのに こんな、お金貰ろぉてもわたい・・・」


エイスケ「エエて! 取っとき、でナ・・・ワシ 助平やねんけど、ジツはもう1つ、家族も呆れる癖というか、こだわりが有ってナ」

アユミ「へえ・・・なんだすのん?」

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        ナンでも首突っ込みたがり屋の『お変人』なんヤ

エイスケ「仕事でも私的旅行でも、訪れた都市、大阪でも東京でも 名古屋でも、そこの街の 風俗や噂話とかって、そういうのに目がナイのヤ ああ。アユミちゃんアンタかて この街でショーバイして長いのやろ?興味としてワシ、この天理って街の事 色々と知りたくてナ、教えてくれへん?」

 (そうさ…こういう手法こそが、役人の出張では けっして手に入らない《街の生きた情報》それを仕入れる最良の手段なのさ…)

それから 小一時間ほど、エイスケは、案外とおしゃべりなアユミのクチから 街にかかわる様々な噂話、逸話を仕入れて。

エイスケ「ふうん…なっかなか おもろいナ、この天理って町も。勉強になったワ ありがとナ♪ で…ついでなんやけどナ、ここいら界隈でヨ…ホレ、この写真に写ってる人物・・・少しでも 見かけておらんかヤ?」

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しげしげと 手渡された写真を眺めたアユミは、

「う~~ん、正直 記憶にあらしまへんわ。でも…率直な印象として…【教会のお人ら】の香りがプンプン匂いますわねぇ・・・」


エイスケ「ん? 教会のって…なんやそれは?」


アユミ「言うまでもない、《天理教の本部 教会関係者》だすワ。お客はんは、神戸とかの1流の勤め人だっしゃろ?そういう人は この天理の土地には居ませんから目立ちます。アタシら利用するって、地元のお百姓か、工場の工員とかばかしやし。」

エイスケ「ふむ・・・」

アユミ「わたしらもプロ、オトナやからイチイチ詮索とかせぇへんのやけどネ、汗にも土にも グリスの脂にも汚れてない、この土地には珍しい、小綺麗な恰好した《とある一団》…工員なんかヘタすりゃ《青姦》やけど、そのヒトらは、キチっと、ココのような旅館使わはるしネ、おそらくは、天理教の関係者 それやろってアタシも仲間らも想定してるのネ ええ」

エイスケ「ホンマかそれ? 連れいの女房以外に、外での《女犯》は ご法度な筈やと聞いとるが・・・」


アユミ「あら 旦はん、ずいぶん青臭い事云わはるんやネ(笑) ってかさあ・・・天理教の 坊さんだか牧師だか知らへんけど、要は…イモ食えば 屁ぇかてこきますやん?(笑)建前とは異なる《生身のオトコ》はどんな身分の人かてイッショやて」
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          坊主とガッコのセンセほどド助平とも云いますしネ

エイスケ「・・・なるほどナ…アンタ、よぉ 世の中の神髄知ってるワ…苦労しとるナ アユミちゃんも・・・」


アユミ「アラやだ(笑)娼婦オダてて どないしまののん♪ ホンマにアタシは記憶にナイのやけど、ヒョっとして・・・」

エイスケ「え? なに??」


アユミ「アタシの この道の朋輩の子、シズちゃんいうねんけど、この子《教会のお人ら》からエラいウケがエエねん。シズちゃん、終戦後はパンパンから、進駐軍貸館の《オンリー》しとったから 兵庫県の三宮で。天理の街娼にしては あかぬけてはるよってネ。もしかしてシズちゃんに尋ねたなら なんぞ返ってくるかも…」

エイスケ「じゃあ…今 逢うのは出来ひんかな? その シズちゃんてコに 急に興味がわいてきたねんワシ」


アユミ「うん 出来るデ、やっぱシズちゃんも今晩の客つかまえて、ココの旅館に入ってくの見てるし、でも…まだ《営業中》終わってないと思うけど…」

エイスケ「かんたんや♪  ホレ、この百円札、番頭か女中頭つかまえてポッケにネジ込んで来いヤ、大喜びで シズちゃんがシケ込んでる部屋の号室 教えてくれよるって。で…シズちゃんとやらに伝えろ《仕事棲んだら この部屋に足運べ》ってナ」


アユミ「それはエエけど・・・なんかエラい 物好きやネ 旦はんも・・・」

エイスケ「物好きダケとちゃうド!気前もエエとこ見せたらあ♪ この日本酒ウマないワ、ビールもウィスキーも、料理、刺身でもテンプラでも ビフテキ喰うか? ナンでも好きなモン、豪勢に 帳場に頼んで来いヤ♪」

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 『わぁ! こんなお御馳走 三宮時代以来だワ♪』

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薄切りの牛肉を挟み込んだ《アメリカンクラブサンド》をクチいっぱいに頬張り、目を白黒させ はしゃぐシズとアユミの両名。


 (ちきしょう…敗戦後の耐乏生活って…ぶっちゃけ、カネさえ出すなら、ナンだってアルやないか!庶民らは麦メシ喰うて、ご馳走は成金ダケだってか?…無性にハラ立つわなあ・・・)


エイスケは思った・・・よくよく観察するなら 二人とも・・・まだまだ若く はしゃいでる姿こそが本来の姿なのだろうと・・・
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      どこにでも居てる 若く明るい娘なのヤ このコらも…

歳だって、丹後の実家に嫁いできた 息子の嫁と殆ど変らないだろう・・・それが今…天理の夜の路地裏で 通りかかる客 オトコの気を引き 袖を引いて、街娼となっている。。。

ヤバい稼業だ・・・ずいぶんと、あぶない思いもしてるのやろぉヨ…戦後が《地獄》ってならば、その最底辺に このコらは置かれてるのだ ああ・・・
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ああそうだ・・・すべては…《戦争のせい 犠牲者》なのだ ああ。。。1秒とて、あの戦争に加担し、戦地に立った者は 皆 十字架を背負った 罪人なのだ・・・
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        ワシらが 命をかけた「あの戦争は」ナンやったのだろぉか?…

命令に逆らえず やむなく…だなんて、泣き言並べて 被害者ぶってやがるオトコなんざ クソだ!!

目を開けてシッカリと観ろ! この国の荒廃、どれだけの人らの家庭も人生も無残に狂わせたのかを・・・

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      地獄を見たのは 兵士ダケじゃあネぇのだゾ!!

クルっても もぉヤっちゃなんねぇ・・・あんな 負けるのが判っててヤる 馬鹿げた戦争…敗北する兵士は それだけで「罪人」なのだ。敗北する戦争はしてはならいのだ ああ。。。

兵隊同志の「戦闘」は どちら側からの敗北宣言で兵士としての義務は終了する。が…この娘らを とくと観るがよい!! 終了した戦争の《傷跡》それが未だ 癒えもせず、夜の辻に立つ身となったんだゾ!!


 罪滅ぼしにもならへんが、ネエちゃんらヨ、せめて今夜は…スキなだけ 食べて 飲んで 思い切りおしゃべりして 笑ってくれヤ ああ・・・
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 『なあ シズちゃんヨ、この…お尋ねのお客…それについて、も少し突っ込んで 知ってること教せぇて欲しいのヤけど ああ』

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 『・・・そこに立ってるのは誰だっ!? 何者だ貴様っ!!』時刻は 真夜中、懐中電灯を向ける 坊主頭のオトコが叫びます。

ライトに照らされ まぶし気に目をしかめて 応えますは エイスケ…「エラい遅かったやんか…奈良盆地の夜半は冷えてあかんワ、さいぜんから待っとった ああ」
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『 …ま、待ってた…だと っっ!?』

・・・おぉ そぉヨ、このワシを 稲刈りドロボーなんぞと勘違いせんといてくれヤ。すべて…《構造》からナンから、承知の上じゃ ああ。

こぉやって アンタ、《隠し田の見回り役》が来るの待ってたのには それなりの訳がある・・・

・・・さあ…ワシを同道して、連れてけヤ・・・【 天理教の本部に 】・・・心配すな 暴れたりとかは一切しないけん。

警察でも税務署でも まして他の宗教の刺客でもあらへんからワシはヨ。云うたらナンやけど、歳はイっても、チト、ワシは手ごわいデ・・・

こぉ見えて、大陸では幾名か・・・イヤよそう・・・。キミまだ若いやろ?早トチリで、カタワになる事つまらんエ?
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     生き延びる為にはナンだってする、それが…【 軍事スパイ 】だ

教会側にとっても、けっして損にはならへん 【 極秘の交渉事 】それがアルねん ああ。。。

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           いよいよ佳境でス 続きます


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港で働く ジツはとっても気の荒い(?)アンちゃん・・・ですが、産まれついてのホルモン分解異常の関係で♂なのにEカップの胸の持ち主 という混沌としているわたしです。

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