S弁護士は語る。
私はあまり怪談などというものに興味をもたない人間で、他人からそんな話を聴こうともせず、自分から好んで話そうともしないのですが、若いときにたった一度、こんな事件に出逢ったことがあって、その謎だけはまだ本当に解けないのです。
今から十五年ほど前に、わたしは麹町の半蔵門に近いところに下宿生活をして、神田のある法律学校に通っていたことがあります。下宿屋といっても、素人家しろうとやに手入れをして七間まほどの客間を造ったのですから、満員となったところで七人以上の客を収容することは出来ない。いわば一種の素人下宿のような家で、主婦は五十をすこし越えたらしい上品な人でした。ほかに廿八九の娘と女中ひとり、この三人で客の世話をしているのですが、だんだん聞いてみると、ここの家うちには相当の財産があって、長男は京都の大学にはいっている。その長男が卒業して帰って来るまで、ただ遊んでいるのもつまらなく、また寂しくもあるというようなわけで、道楽半分にこんな商売を始めたのだそうです。したがって普通の下宿屋とはちがって、万事がいかにも親切で、いわゆる家族的待遇をしてくれるので、止宿人ししゅくにんはみな喜んでいました。
そういうわけで、私たちは家の主婦を奥さんと呼んでいました。下宿屋のおかみさんを奥さんと呼ぶのは少し変ですが、前にも言う通り、まったく上品で温和な婦人で、どうもおかみさんとは呼びにくいように感じられるので、どの人もみな申合せたように奥さんと呼び、その娘を伊佐子さんと呼んでいました。家の苗字は――仮りに堀川といって置きましょう。
・・・っといったカタチで この「白髪鬼」は始まるのでありますが・・・
時代設定として 今より およそ100年ほど前の時代であるのですが この物語は。
それなのに「妙に」・・・現代的といいますか?東京は千代田区を中心として、江戸の時代 それまでの風俗や生活ぶりを ある意味「意図的に」、拒絶するかのように、明治時代以降の『都市部におけるモダンな生活』を指向している感じがリクめするのでありまして。
今のような「奨学金・学資補助制度」もない当時に、地方から東京へと上京し、法律専門学校に通うってなりますと、ある程度以上の実家の経済力あってしかり、
でも、この小説の世界で描かれてます この時代における「エリート層」ってのは、明治大正期の「高等遊民」って、あの イヤらしさは皆無で。
いろエロおせぇてくだせえ いひいひ♪
(今回作品の意図とマルで違いまス・・)
この時代のエリートにも、あくまで学術資格を取得するべく、懸命に頑張って勉強したのでありましょう、そんな気骨が感じられて リクめ好きなのでして。
十一月はじめの霽はれた夜でした。わたしは四谷須賀町のお酉とりさまへ参詣に出かけました。東京の酉とりの市まちというのをかねて話には聞いていながら、まだ一度も見たことがない。さりとて浅草まで出かけるほどの勇気もないので、近所の四谷で済ませて置こうと思って、ゆう飯を食った後に散歩ながらぶらぶら行ってみることになったのですから、甚だ不信心の参詣者というべきでした。今夜は初酉だそうですが、天気がいいせいか頗すこぶる繁昌しているので、混雑のなかを揉まれながら境内けいだいと境外を一巡して、電車通りの往来まで出て来ると、ここも露天で賑わっている。その人ごみの間で不意に声をかけられました。
「やあ、須田君。君も来ていたんですか。」
「やあ、あなたも御参詣ですか。」
「まあ、御参詣と言うべきでしょうね。」
その人は笑いながら、手に持っている小さい熊手と、笹の枝に通した唐とうの芋とを見せました。彼は山岸猛雄――これも仮名です――という男で、やはり私とおなじ下宿屋に止宿しているのですから二人は肩をならべて歩き始めました。
「ずいぶん賑やかですね。」と、わたしは言いました。「そんなものを買ってどうするんです。」
「伊佐子さんにお土産ですよ。」と、山岸はまた笑っていました。「去年も買って行ったから今年も吉例でね。」
「高いでしょう。」と、そんな物の相場を知らない私は訊ききました。
「なに、思い切って値切り倒して……。それでも初酉だから、商人の鼻息がなかなか荒い。」
そんなことを言いながら四谷見附の方角へむかって来ると、山岸はあるコーヒー店の前に立ちどまりました。
「君、どうです。お茶でも飲んで行きませんか。」
かれは先に立って店へはいったので、わたしもあとから続いてはいると、幸いに隅の方のテーブルが空すいていたので、二人はそこに陣取って、紅茶と菓子を注文しました。
東京の中心部・・・それが「あるがゆえに」、酉の市って 晩秋の毎年恒例のあの お祭りがかえって 際立ちます。
近代的な東京ってものと、古風とも呼べます 酉の市のその対比が、田舎を舞台にするよりもクッキリと、夜の東京の「闇の暗さと気温の寒さ」それを想像できます。
当時のカルチェラタン 神田付近で 喫茶店にてコーヒー&ケーキだって、今のご時世ならば それは仏料理のディナー食べるのと変わらないだろう出費、山岸って人物の経済的豊かさがよくわかります。
で・・・確信犯的に「はしょって」しまいますが、このハナシ・・・一種 なにやらの「因果」が絡んだと思える「怪談噺」でありまして はい。
「山岸」という その先輩は、頭がイイにもかかわらず、今でいう司法試験に 何度トライしても ついぞ合格しない・・・。
それというのが 山岸が曰くには・・・『君は幽霊を信じないと言いましたね。わたしも勿論、信じなかった。信じないどころか、そんな話を聴くと笑っていた。その私が幽霊に責められて、とうとう自分の目的を捨てなければならない事になったんですよ。幽霊を信じない君たちの眼から見れば、実にばかばかしいかも知れない。まあ、笑ってくれたまえ。』と・・・。
『今も言う通り、わたしは幽霊に責められているんですよ。いや、実にばかばかしい。われながら馬鹿げ切っていると思うのだが、それが事実であるからどうにも仕様がない。今まで誰にも話したことはないが、わたしが初めて試験を受けに出て、一生懸命に答案を書いていると、一人の女のすがたが私の眼の前にぼんやりと現われたんです。場所が場所だから、女なぞが出て来るはずがない。それは痩形で背の高い、髪の毛の白い女で、着物は何を着ているかはっきりと判わからないが、顔だけはよく見えるんです。髪の白いのを見ると、老人かと思われるが、その顔は色白の細おもてで、まだ三十を越したか越さないか位にも見える。そういう次第で、年ごろの鑑定は付かないが、髪の毛の真っ白であるだけは間違いない。その女がわたしの机の前に立って、わたしの書いている紙の上を覗き込むようにじっと眺めていると、不思議にわたしの筆の運びがにぶくなって、頭もなんだか茫として、何を書いているのか自分にも判らなくなって来る……。君はその女をなんだと思います。』と。。。
あっけにとられて聞いているだけの主人公の須田。
おそらく須田としては『山岸先輩・・イカレちゃったのかなあ??』って、たぶんそう思ったと思うンですよん ええ。
現実の世の中にも、似たパターンの いわゆる「神経病んでるヒト」ってのが居りますわナ? 「強迫神経症」ってな場合もあれば、ある意味 単純に覚せい剤とかでの 麻薬中億による幻想のケースも多々ございまス。
「現実的現象結果」として、それらに ほぼ共通するのは、『おのれ独りにダケ 見えている現象』なのですネ。
「ヒネクレ怪談」書いてます わたいのよな ハンパな現実主義者(^^;にとっては、「そのヒトダケの現象」っていうものについては、たぶんに懐疑的になるのでしてネ、
そういった意味でも 突然に突拍子もナイ 山岸からの告白を受けた 須田って御仁の 困惑ぶりは 手に取るように判ります はい。
「そこで、あなたはその女に就いてどう考えておいでになったんです。」
「それは神経衰弱の結果だと見ていました。」と、山岸は答えました。「幾らのん気な人間でも、試験前には勉強する。殊にその当時は学校を出てから間もないので、毎晩二時三時ごろまでも勉強していたから、神経衰弱の結果、そういう一種の幻覚を生じたものだろうと判断しました。したがって、さのみ不思議とも思いませんでした。」
「その女はそれぎり姿を見せませんでしたか。」と、わたしは追いかけるように訊いた。
「いや、お話はこれからですよ。その頃わたしは神田に下宿していたんですが、何分にも周囲がそうぞうしくって、いよいよ神経を苛立いらだたせるばかりだと思ったので、さらに小石川の方へ転宿して、その翌年に第二回の試験を受けると、これも同じ結果に終りました。わたしの机の前には、やはり髪の白い女の姿があらわれて、わたしが書いている紙の上をじっと覗いているんです。畜生、又来たかと思っても、それに対抗するだけの勇気がないので、又もや眼が眩くらんで、頭がぼんやりして、なんだか夢のような心持になって……。結局めちゃめちゃの答案を提出して……。それでも私はまだ悲観しませんでした。やはり神経衰弱が祟っているんだと思って、それから三月ほども湘南地方に転地して、唯ぶらぶら遊んでいると、頭の具合もすっかり好くなったらしいので、東京へ帰って又もや下宿をかえました。それが現在の堀川の家で、今までのうちでは一等居ごころのいい家ですから、ここならば大いに勉強が出来ると喜んでいると、去年は第三回の受験です。近来は健康も回復しているし、試験の勝手もよく判っているし、今度こそはという意気込みで、わたしは威勢よく試験場へはいって、答案をすらすらと書きはじめると、髪の白い女が又あらわれました。いつも同じことだから、もう詳しく言うまでもありますまい。わたしはすごすごと試験場を出ました。」
あり得うべからざる話を聴かされて、わたしも何だか夢のような心持になって来ました。そこへ蒲焼のお代りを運んで来ましたが、わたしはもう箸をつける元気がない。それは満腹の為ばかりではなかったようです。山岸も皿を見たばかりで、箸をとりませんでした。
うなぎを食うよりも、話のつづきを聞く方が大事なので、わたしは誘いかけるように又訊きました。
「そうすると、それもやっぱり神経のせいでしょうか。」
「さあ。」と、山岸は低い溜息を洩らしました。「こうなると、わたしも少し考えさせられましたよ。実は今まで郷里の方に対して、受験の成績は毎回報告していましたが、髪の白い女のことなぞはいっさい秘密にしていました。そんなことを言ってやったところで、誰も信用する筈もなし、落第の申訳にそんな奇怪な事実を捏造ねつぞうしたように思われるのも、あまり卑怯らしくって残念だから、どこまでも自分の勉強の足らないことにして置いたのです。ねえ、そうでしょう。わたしの眼にみえるだけで、誰にも判らないことなんだから、いくら本当だと主張したところで信用する者はありますまい。まして自分自身も神経衰弱の祟りと判断しているくらいだから、そんな余計なことを報告してやる必要もないと思って、かたがたその儘にして置いたんですが、三度が三度、同じことが続いて、おなじ結果になるというのは少しおかしいと自分でもやや疑うようになって来た。
そこへ郷里の父から手紙が来て、ちょっと帰って来いというんです。父は九州のFという町でやはり弁護士を開業しているんですが、早い子持ちで、廿三の年にわたしを生んだのだから、去年は五十二で、土地の同業者間ではまずいい顔になっている。そのおかげで私もまあこうしてぶらぶらしていられるんですが……。その父も毎々の失敗にすこし呆れたんでしょう。ともかくも一度帰って来いというので、去年の暮から今年の正月にかけて……。それは君も知っているでしょう。それから東京へ帰って来たときに、わたしの様子に何か変ったところがありましたか。」
「いいえ、気がつきませんでした。」と、わたしは首をふりました。
「そうでしたか。なんぼ私のような人間でも、三回も受験に失敗しているんだから、久しぶりで国へ帰って、父の前へ出ると、さすがにきまりが悪い。そこは人情で、なにかの言い訳もしたくなる。その言い訳のあいだに口がすべって、髪の白い女のことをうっかりしゃべってしまったんです。すると、父は俄かにくちびるを屹きっと結んで、しばらく私の顔を見つめていたが、やがて厳粛な口調で、お前それは本当かという。本当ですと答えると、父は又だまってしまって、それぎりなんにも言いませんでしたが、さてそうなると私の疑いはいよいよ深くならざるを得ない。父の様子から想像すると、これには何か子細のあることで、単にわたしの神経衰弱とばかりは言っていられないような気がするじゃありませんか。その時はまあそれで済んだんですが、それから二、三日の後、父はわたしに向って、もう東京へ行くのは止せ、弁護士試験なぞ受けるのは思い切れと、こう言うんです。実家に居据わっていても仕方がないので、わたしは父に向って、お願いですから、もう一度東京へやってください。万一ことしの受験にも失敗するようであったら、その時こそは思い切って帰郷しますと、無理に父を口説いて再び上京しました。したがって、ことしの受験はわたしに取っては背水の陣といったようなわけで、平素のん気な人間も少しく緊張した心持で帰って来たんです。それが君たちに覚られなかったとすると、私はよほどのん気にみえる男なんでしょうね。」
山岸は又さびしく笑いながら語りつづけました。
もう一つ、わたしに強い衝動をあたえたのは、父の手紙にこういうことが書いてあるんです。たとい無理に試験を通過したところで、弁護士という職業を撰むことは、お前の将来に不幸をまねく基もとであるらしく思われるから、もう思い切って帰郷して、なにか他の職業を求めることにしろ。お前として今までの志望を抛棄するのは定めて苦痛であろうと察せられるが、お前にばかり強しいるのではない、わたしも今年かぎりで登録を取消して弁護士を廃業する。」
「なぜでしょう。」と、わたしは思わず喙くちをいれました。
なんというか、「事の因果」については いっさいが不明なままですが、息子より相談を受けた 山岸の父親には なにか??「思い当たるフシ」があるようで・・・。
ネタのバラしになりますが、「その謎」については、ラストの部分まで読んでも ナンも語られないまま、文字通りの「謎のまま」なんですナ。ぶっちゃけ かえって「それゆえに 怖い」。
かえって、「怪談としての出来具合」って点からするならば、この手法は より「恐怖」を大きく映し出す コンテンツともなります はい。
『たしかに なんらかの因果みたいなものが存在し、父親にはそれが思い当たるらしい。だけども、自分にはそれが皆目 見当もつかないまま』って、文字通り「罪もないまま 引き込まれた者が抱く恐怖感」のそれですわナ?
「なぜだか判らない。」と、山岸は思いありげに答えました。「しかし判らないながらも、なんだか判ったような気もするので、わたしもいよいよ思い切って東京をひきあげて、年内に帰国するつもりです。父はF町の近在に相当の土地を所有している筈だから、草花でも作って、晩年を送る気になったのかも知れない。わたしも父と一緒に園芸でもやってみるか、それとも何か他の仕事に取りかかるか、それは帰郷の上でゆっくり考えようと思っているんです。」
わたしは急にさびしいような、薄暗い心持になりました。どんな事情があるのか知れないが、父も弁護士を廃業する、その子も弁護士試験を断念して帰る。それだけでも聞く者のこころを暗くさせるのに、さらに現在のわたしとしては、自分が平素尊敬している先輩に捨てて行かれるのが、いかにも頼りないような寂しい思いに堪えられないので、黙って俯向いてその話を聞いていると、山岸は又言いました。
「今夜の話はこの場かぎりで、当分は誰にも秘密にしておいてくれたまえ。いいかい。奥さんにも伊佐子さんにも暫く黙っていてくれたまえ。」
奥さんはともあれ、伊佐子さんがこれを知ったら定めて驚くことであろうと、わたしは気の毒に思いましたが、この場合、かれこれ言うべきではありませんから、山岸の言うがままに承諾の返事をして置きました。
お代りの蒲焼は二人ともにちっとも箸をつけなかったので、残して行くのも勿体ないといって、その二人前を折詰にして貰うことにしました。それは伊佐子さんへのお土産にするのだと、山岸は言っていました。熊手と唐の芋と、うなぎの蒲焼と、重ね重ねのおみやげを貰って、なんにも知らない伊佐子さんはどんなに喜ぶことかと思うと、わたしはいよいよ寂しいような心持になりました。
表へ出ると、木枯しとでも言いそうな寒い風が、さっきよりも強く吹いていました。宿へ帰るまで二人は黙って歩きました。
それから綜合して考えると、これは弁護士という職業に関連した一種の秘密であるらしい。山岸は詳しいことを明かさないが、今度の父の手紙にはその秘密を洩らしてあるのかも知れない。そこで彼もとうとう我がを折って、にわかに帰郷することになったのかも知れない。
わたしの空想はだんだんに拡がって来ました。山岸の父は職業上、ある訴訟事件の弁護をひき受けた。刑事ではあるまい、おそらく民事であろう。それが原告であったか、被告であったか知らないが、ともかくも裁判の結果が、ある婦人に甚だしい不利益をあたえることになった。その婦人は、髪の白い人であった。彼女かれはそれがために自殺したか、悶死したか、いずれにしても山岸の父を呪いつつ死んだ。その恨みの魂がまぼろしの姿を試験場にあらわして、彼の子たる山岸を苦しめるのではあるまいか。
まさかネ。。。
こう解釈すれば、怪談としてまずひと通りの筋道は立つわけですが、そんな小説めいた事件が実際にあり得るものかどうかは、大いなる疑問であると言わなければなりません。
さっき聞き落したのですが、一体その髪の白い女は試験場にかぎって出現するのか、あるいは平生でも山岸の前に姿をみせるのか、それを詮議しなければならない事です。山岸の口ぶりでは、平生は彼女と没交渉であるらしく思われるのですが、それも機会を見てよく確かめて置かなければなりません。そんなことをいろいろ考えているうちに、近所の米屋で、一番鶏の歌う声がきこえました。
須田の「困惑と悩み」は 言い換えるならばコレは、旧い「因習文化」と、「近代的合理性」のブツかり合いによる 悩みだと思います。
「行燈」が「電灯」へと替わり 恐怖の概念も変化が
ぶっちゃけ 「江戸時代における 怪異や怪談」ってのは、明治の文明開化で、「電灯」ってアイテムが一般化したことにより 滅びたともいえますわナ?
おそらくは それまで庶民を恐怖させていた「怪異なもの」ってのは、新しい文化と価値観によって コテンパンに否定されていたのだと察せられます。
ただ・・・正体のてんで判らない「怪異なものによる恐怖」ってのは、トキに 時代性をも「超えてしまうもの」でもアリましてネ、
ナマイキですが『岡本綺堂ウマいっ!』って、思わず思うのは・・・このハナシの舞台が、江戸の時代の物語展開だってするなら ぶっちゃけ「たいして怖くない」・・・
岡本綺堂センセは 明治期の大劇作家でおます
文明開化の時代が訪れ、『ンなもん 今どきアルかよ!』ってな、因果が絡んでいるらしい 古式な「怪談」それが、近代的であるがゆえに、「さらなる謎」として、その恐怖の実体を より大きくしているのですからネ。
同じような「内容が判らない恐怖」については、リクにも いくつか経験がありましてネ・・・
ジツのところ・・・東京湾沖の 夜の海なのですが・・・決まった時期に「必ずのように」、
いわゆる「鬼火」ってのが何十という数 それが舞い狂うのでありまして マジに・・・。
実際わたいも観てます。でも「その原因 因果」ってのが てんで「判らないまま」。。。
この道の相当な先輩に 問いただしても・・・『言わない!ってか、知らない方がオメエのためだからヨ』って、教えてくれませんで・・・。
なんか・・・航空機の事故が その鬼火と関係しているってウワサもあるんですがネ、詳細や時期についてはマッタクの「謎」。。。
あと 品川から 川へと入ったエリアにおけます『ヤバいのが出やすい地域』ってのも 未だに有って。。。
わたいが目撃した「それ」は・・・水面から 鎖骨のあたりから上の部分が出たまま 微塵も動かない「おとこ」。。。
プカプカって、上下に動くなら「あ 人間だな」って理解できるンでおますだヨ、でも・・水深が8mぐらいあります そのエリアで、上下に揺れるでもなく 「直立している」ってのは、まず・・・不可能で。。。
気持ちよくない目で ジっと見てるコッチを・・
で、浮いてる「それ」が、キツい目つきをしながら、ぶっちゃけ『視線が動く』・・・あきらかに「それ」は、コッチの動きを 目の玉ヨコに動かして追っているって。
そしたら やっぱ先輩格の人が『見えてないフリしてろ!そうすりゃナンも起きない。間違ってもアレに声なんかかけるなヨ いいな!』って。
『海ってのはナ 昔っから色々あんだヨ。イチイチ首突っ込んでたなら 命いくつあっても足ンねぇゼ』って。
「なんらかが起きている」それって《事実》なんだと思いまス、わたいも無碍に否定なんかしません はい。
考えりゃ このカラダも「不可思議」(笑)(^^;
でも、「プラマイZERO」で、いかにも因果でござい!ってな 怪談よりも、「オチがわかんない」ってのの 独特の恐怖、そういうのが確かに有ります はい。
午後六時ごろに伊佐子さんがわたしの部屋へ夕飯の膳を運んで来ました。このごろの六時ですから、日はすっかり暮れ切って、狭い部屋には電燈のひかりが満ちていました。
「きょうは随分お寒うござんしたね。」と、伊佐子さんは言いました。平生から蒼白い顔のいよいよ蒼ざめているのが、わたしの眼につきました。
「ええ、今からこんなに寒くなっちゃやりきれません。」
いつもは膳と飯櫃めしびつを置いて、すぐに立ちさる伊佐子さんが、今夜は入口に立て膝をしたままで又話しかけました。
「須田さん。あなたはゆうべ、山岸さんと一緒にお帰りでしたね。」
「ええ。」と、わたしは少しあいまいに答えました。この場合、伊佐子さんから山岸のことを何か聞かれては困ると思ったからです。
「山岸さんは何かあなたに話しましたか。」と、果して伊佐子さんは訊きはじめました。
「何かとは……。どんな事です。」
「でも、この頃は山岸さんのお国からたびたび電報がくるんですよ。今月になっても、一週間ばかりのうちに三度も電報が来ました。そのあいだに郵便も来ました。」
「そうですか。」と、私はなんにも知らないような顔をしていました。
「それには何か、事情があるんだろうと思われますが……。あなたはなんにもご承知ありませんか。」
「知りません。」
「山岸さんはゆうべなんにも話しませんでしたか。わたしの推量では、山岸さんはもうお国の方へ帰ってしまうんじゃないかと思うんですが……。そんな話はありませんでしたか。」
わたしは少しぎょっとしましたが、山岸から口止めをされているんですから、迂濶うかつにおしゃべりは出来ません。それを見透かしているように、伊佐子さんはひと膝すりよって来ました。
「ねえ。あなたは平生から山岸さんと特別に仲よく交際しておいでなさるんですから、あの人のことについて何かご存じでしょう。隠さずに教えてくださいませんか。」
須田はいわゆる「板挟み」ですわナ?下宿屋の出戻りの娘 伊佐子ってのが、どうも 山岸に惚れているらしい。
だけど 須田と山岸の関係性、ハッキリとした友情とかではないでしょうが、『このハナシは内密に』ってクチ約束にせよ 男同士で締結した「秘密」について言及は出来ませんね。
そのうちに伊佐子さんの顔色はますます悪くなって、飛んでもないことを言い出しました。
「あの、山岸さんという人は怖ろしい人ですね。」
「なにが怖ろしいんです。」
「ゆうべお土産だといって、うなぎの蒲焼をくれたでしょう。あれが怪しいんですよ。」
伊佐子さんの説明によると、ゆうべあの蒲焼を貰った時はもう夜が更けているので、あした食うことにして台所の戸棚にしまっておいた。この近所に大きい黒い野良猫がいる。それがきょうの午前中に忍び込んできて、女中の知らない間に蒲焼の一と串をくわえ出して、裏手の掃溜はきだめのところで食っていたかと思うと、口から何か吐き出して死んでしまった。猫は何かの毒に中あたったらしいというのです。
こうなると、わたしも少しく係合いがあるような気がして、そのまま聞き捨てにはならないことになります。
「猫はまったくそのうなぎの中毒でしょうか。」と、私は首をかしげました。「そうして、ほかの鰻はどうしました。」
「なんだか気味が悪うござんすから、母とも相談して、残っていた鰻もみんな捨てさせてしまいました。熊手も毀こわして、唐の芋も捨ててしまいました。」
「しかし現在、その鰻を食ったわれわれは、こうして無事でいるんですが……。」
「それだからあの人は怖ろしいと言うんです。」と、伊佐子さんの眼のひかりが物凄くなりました。「おみやげだなんて親切らしいことを言って、わたし達を毒殺しようと巧たくらんだのじゃないかと思うんです。さもなければ、あなた方の食べた鰻には別条がなくって、わたし達に食べさせる鰻には毒があるというのが不思議じゃありませんか。」
普通ハッキリ証拠もなしに「そこまで云うか??」
「そりゃ不思議に相違ないんですが……。それはあなた方の誤解ですよ。あの鰻は最初からお土産にするつもりで拵えたのじゃあない、われわれの食う分が自然に残って、おみやげになったんですから……。わたしは始終一緒にいましたけれど、山岸さんが毒なぞを入れたような形跡は決してありません。それはわたしが確かに保証します。鰻がひと晩のうちにどうかして腐敗したのか、あるいは猫が他の物に中毒したのか、いずれにしても山岸さんや私には全然無関係の出来事ですよ。」
わたしは熱心に弁解しましたが、伊佐子さんはまだ疑っているような顔をして、成程そうかとも言わないばかりか、いつまでもいやな顔をして睨んでいるので、わたしは甚だしい不快を感じました。
「あなたはどうしてそんなに山岸さんを疑うんですか。単に猫が死んだというだけのことですか、それともほかに理由があるんですか。」と、わたしは詰問するように訊きました。
「ほかに理由がないでもありません。」
「どんな理由ですか。」
上等じゃんかテメエ。。。
「あなたには言われません。」と、伊佐子さんはきっぱりと答えました。余計なことを詮議するなというような態度です。
おやおや??なんだかミョ~な雰囲気です はい。伊佐子ってヒト、単純に 山岸に恋い焦がれているとも云えない感じが・・・。
ぶっちゃけ このリクめが 須田はんの立場だったならば・・・『やっべ・・・このオンナ、チトばかり《サイコ》だワ・・・。かかわりたくねぇ~~(泣)』って 逃げ出したくなる確率200%だワ うむうむ。
お読みのみなちゃまにも お聞きしますが、ドラマや映画のような いわゆる強烈な恋愛した経験がなくとも・・・
ぶっちゃけ「この手の人種」か伊佐子は?
上記のようなパターン・・『ねぇ!■■君がワタシのこと、なんか云ってなかった??知ってンでショ!教えなさいよ!隠してないで!』などと・・・ガッコのクラスで 正直なところ『はぁ??■■がマジで オメエのこと好いてるだなんて思ってル??(呆)』って女子から、こちとらはゼンゼン関係もないのに、ナンでか?不条理に、クロい渦の中に引き入れられちゃうって そんな経験。
メンタル的にも 多分に「揺さぶられちゃってル」かかわりたくないタイプのヒトってのに 時代の変遷はござんせん。ヒト同士の環境は 明治大正の頃と、今とで微塵も変わりませんネ。
わたしも頭がむしゃくしゃして、再び二階の部屋へもどる気にもなれなかったので、何がなしに表へふらりと出てゆくと、そのうしろ姿をみて、奥さんがあとから追って来ました。
「須田さん、須田さん。」
呼びとめられて、わたしは立ちどまりました。家から一五、六間も離れたところで、路のそばには赤いポストが寒そうに立っています。そこにたたずんで待っていると、奥さんは小走りに走って来て、あとを見返りながら小声で訊きました。
「あの……。伊佐子が……。あなたに何か言いはしませんでしたか。」
なんと答えようかと、私はすこしく考えていると、奥さんの方から切り出しました。
「伊佐子が何か鰻のことを言いはしませんか。」
「言いました。」と、わたしは思い切って答えました。「ゆうべの鰻を食って、黒猫が死んだとかいうことを……。」
「猫の死んだのは本当ですけれど……。伊佐子はそれを妙に邪推しているので、わたしも困っているのです。」
「まったく伊佐子さんは邪推しているのです。積もってみても知れたことで、山岸さんがそんな馬鹿なことをするもんですか。」
わたしの声が可なりに荒かったので、奥さんもやや躊躇しているようでしたが、再びうしろを見返りながらささやきました。
「あなたも御存じだかどうだか知りませんけれど、このごろ山岸さんのところへお国の方から電報や郵便がたびたび来るので、娘はひどくそれを気にしているのです。山岸さんは郷里へ帰るようになったのじゃあないかと言って……。」
「山岸さんがもし帰るようならば、どうすると言うんです。伊佐子さんはあの人と何か約束したことでもあるんですか。」と、わたしは無遠慮に訊き返した。
奥さんは返事に困ったような顔をして、しばらく黙っていましたが、その様子をみて私にも覚られました。ほかの止宿人たちが想像していたとおり、山岸と伊佐子さんとのあいだには、何かの絲がつながっていて、奥さんもそれを黙認しているに相違ないのです。そこで、わたしはまた言いました。
「山岸さんはああいう人ですから、万一帰郷するようになったからといって、無断で突然たち去る気づかいはありません。きっとあなたがたにも事情を説明して、なにごとも円満に解決するような方法を講じるに相違ありませんから、むやみに心配しない方がいいでしょう。伊佐子さんがなんと言っても、うなぎの事件だけは山岸さんにとってたしかに寃罪です。」
伊佐子さんに話したとおりのことを、わたしはここで再び説明すると、奥さんは素直にうなずきました。
伊佐子さんに対しては一種の義憤を感じていた私も、おとなしい奥さんの悩ましげな顔色をみていると、又にわかに気の毒のような心持になって、なんとか慰めてやりたいと思っているところへ、あたかも集配人がポストをあけに来たので、ふたりはそこを離れなければならないことになりました。
そのときに気がついて見返ると、伊佐子さんが門口かどぐちに立って遠くこちらを窺っているらしいのが、軒燈の薄紅い光りに照らしだされているのです。わたし達もちょっと驚いたが、伊佐子さんの方でも自分のすがたを見付けられたのを覚ったらしく、消えるように内へ隠れてしまいました。
またまたナマイキ、この 岡本綺堂ってセンセは ホンマ・・『上手いなあ。。。』って そう思います はい。
さすがは 作家である前に「劇作家」であった そのスキルが縦横に発揮されてます はい。
伊佐子の母であり 下宿屋の主人の「奥さん」この上記短い会話で「すべて」、『ひととなり』ってのが明解に判ってしまいます。
伊佐子と同様に『イっちゃってル』ヒトではなくて、常識も冷静も併せ持った 市井の常識人 かつ「悩める母」でス。
そうしますと、見事な手法・・『対比法』が成立します。至極真っ当な母親の娘 伊佐子が、母親が正常である分もっと余分に、「その異常性」がクッキリ浮かぶという。
物語はハイライト部分に突入します・・・
奥さんに別れて、麹町通りの方角へふた足ばかり歩き出した時、あたかも私の行く先から、一台の自動車が走ってきました。あたりは暗くなっているなかで、そのヘッド・ライトの光りが案外に弱くみえるので、私はすこしく変だと思いながら、すれ違うときにふと覗いてみると、車内に乗っているのは
【 一人の婦人でした、その婦人の髪が真っ白に見えたので、わたしは思わずぞっとして立停まる間に、自動車は風のように走り過ぎ、どこへ行ってしまったか、消えてしまったか、よく判りませんでした。 】
これはおそらく私の幻覚でしょう。いや、たしかに幻覚に相違ありません。髪の白い女の怪談を山岸から聞かされていたので、今すれちがった自動車の乗客の姿が、その女らしく私の眼を欺いたのでしょう。またそれが本当に髪の白い婦人であったとしても、白髪の老女は世間にはたくさんあります。単に髪が白いというだけのことで、それが山岸に祟っている怪しい女であるなどと一途いちずに決めるわけにはいきません。いずれにしても、そんなことを気にかけるのは万々ばんばん間違っていると承知していながら、私はなんだか薄気味の悪いような、いやな心持になりました。
「はは、おれはよっぽど臆病だな。」
自分で自分を嘲りながら、私はわざと大股にあるいて、灯の明るい電車路の方へ出ました。ゆうべのような風はないが、今夜もなかなか寒い。何をひやかすということもなしに、四谷見附までぶらぶら歩いて行きましたが、帰りの足は自然に早くなりました。帽子もかぶらず、外套も着ていないので、夜の寒さが身にしみて来たのと、留守のあいだにまた何か起っていはしまいかという不安の念が高まってきたからです。家へ近づくにしたがって、わたしの足はいよいよ早くなりました。裏通りへはいると、月のひかりは霜を帯びて、その明るい町のどこやらに犬の吠える声が遠くきこえました。
堀川の家の門かどをくぐると、わたしは果して驚かされました。わたしが四谷見附まで往復するあいだに、伊佐子さんは劇薬を飲んで死んでしまったのでした。山岸はまだ帰りません。その明き部屋へはいり込んで、伊佐子さんは自殺したのです。
猫の死んだ一件を女中がうっかりしゃべったので、帰るとすぐに私も調べられました。そこへあたかも山岸がふらりと帰ってきたので、これは一応の取調べぐらいではすみません、その場から警察へ引致いんちされました。伊佐子さんは自殺に相違ないのですが、猫の一件があるのと、その書置に、「山岸という男に殺されました」などと書いてあるので、山岸はどうしても念入りの取調べを受けなければならないことになったのです
要は この「イカレおんな」は、テメエ独りで 妄想の挙句に、毒呑んで自殺しちゃった・・・って、ジツに ハタ迷惑なお女中で(--;
ま~無理心中とか 放火に及ばなかったダケ イイとも申せますが うむうむ・・・。なんにせよ 人騒がせだ。
しかし この時点で、死んだ 伊佐子ですが、山岸に対する「想い」ってのは、もはや この段階において思慕や愛情のそれではなくて、
むしろ 確定した「憎しみ」・・テメエの勝手な自殺行為を 山岸による犯行だと、冤罪に仕立ててやろうって、明らかなる「悪意」が存在しますよネ?
ただ・・・無性に「気になる」。。。須田が見かけた 一台の自動車の中に居た 【 白髪の女性 】・・・一体ダレなんだコイツは??現在進行形の物語の中で どのような「役」を演じているのでしょうか??
伊佐子さんは単に山岸の帰郷を悲観して、いわゆる失恋自殺を遂げたものと認めるのほかないことになりました。猫を殺したのも伊佐子さんの仕業で、劇薬の効き目を試すために、わざと鰻に塗りつけて猫に食わせたのであろうと想像されました。猫の死骸を解剖してみると、その毒は伊佐子さんが飲んだものと同一であったそうです。
ただ判りかねるのは、伊佐子さんがなぜあの猫の死を証拠にして、山岸が自分たち親子を毒殺しようと企てたなどと騒ぎ立てたかということですが、それも失恋から来た一種のヒステリーであるといえばそれまでのことで、深く詮議する必要はなかったのかも知れません。
そんなわけで、山岸は無事に警察から還されて、この一件はなんの波瀾をもまき起さずに落着らくちゃくしました。
ただここに一つ、不思議ともいえばいわれるのは、伊佐子さんの死骸の髪の毛が自然に変色して、いよいよ納棺というときには、老女のような白い髪に変ってしまったことです。おそらく劇薬を飲んだ結果であろうという者もありましたが、通夜の席上で奥さんはこんなことを話しました。
「あの晩、須田さんに別れて家へ帰りますと、伊佐子の姿はみえません。たった今、内へはいった筈だが、どこへ行ったのかと思いながら、茶の間の長火鉢のまえに坐る途端に、表へ自動車の停まるような音がきこえました。誰が来たのかと思っていると、それぎりで表はひっそりしています。はてな、どうも自動車が停まったようだがと、起って出てみると表にはなんにもいないのです。すこし不思議に思って、そこらを見まわしていると、女中があわてて駈け出して来て、大変だ大変だと言いますから、驚いて内へ引っ返すと、伊佐子は山岸さんの部屋のなかに倒れていました。」
伊佐子さんの葬儀を終った翌日の夜行列車で、山岸は郷里のF町へ帰ることになったので、わたしは東京駅まで送って行きました。
それは星ひとつ見えない、暗い寒い宵であったことを覚えています。待合室にいるあいだに、かの自動車の一件をそっと話しますと、山岸は唯うなずいていました。そのときに私は訊きました。
「髪の白い女というのは、あなたが試験場へはいった時だけに見えるんですか、そのほかの時にも見えるんですか。」
「堀川の家うちへ行ってからは、平生でも時々見えることがあります。」と、山岸は平気で答えました。
「今だから言いますが、その女の顔は伊佐子さんにそっくりです。伊佐子さんは死んでから、その髪の毛が白くなったというが、わたしの眼には平生から真っ白に見えていましたよ。」
わたしは思わず身を固くした途端に、発車を知らせるベルの音がきこえました。
・・・っと ま~~こうして終わります はい。
思うのですが、こハナシ 《怪談噺》として見るならば、『肝心の《オチ》がマルでわからんやんケ!』未完成というか ハッキリってシッパイ作品ですわナ?
でもネ・・・リクめは思うのですが、ぶっちゃけ・・『このハナシは《オチ》が無くてこそが正解!』であると そう思うのでして ええ。
「コレは こうであって・・・それだから・・・こうなったんだよね わかるでショ?」って、チマチマ説明なんかしない方がよござんす。
それよりも「謎は謎のまま」であるからこそ、独特の不可思議さと不気味さがクッキリと浮き立ちます。
ほんでネ、リクめ思うのですが・・・この「白髪鬼」って小説、テイストとして 日本の古い怪談であります 「雪おんな」に かなり似ているって思うのです はい。
山岸に 死霊か生霊かは判然としませんが、とにかく《執りついた》存在が、山岸の試験合格を邪魔する、その「遺恨」は親の代からの受け継ぎでもあるらしい。
しかし 山岸がおかれていたシチュエーションの怖さってブッ飛んでますよネ?? 告白を聴いた須田は てっきり、その白髪鬼が出現するのは 年に一度の試験会場のみであると思っていたならば・・・
山岸の「目」には、普段から生活する 神田の下宿屋で【 毎日 】・・・伊佐子ってゆ~ 白髪鬼とカオを合わせていたってンですからアナタ・・・。
『そうかな?そんなに怖いか このハナシ??』っと お思いの方 チトばかり 最後のわたいのハナシ聴いておくんない。
リクめ作り出した 「親父」のハナシなのですがジツは・・・。
オヤジは 幼少時から、幾度も幾度も 同じような夢を見たそうで。
それは、茫洋とした 霧の中に自分独りが立っていて。霧がチョっとだけ晴れますなら、そこに・・・
「巨大な2つの目」が出現して オヤジのことをギロリ!って睨むのだそうで。
『オンナの目ヤってのはスグにわかった。造りも整った 美人の目ヤってのもわかる。その目が訴えてくるのヤ』
鋭い視線で睨みつけてるのですが その目は、でも なんかわかる・・・憎しみとかの怨嗟の感情ばかりではなく、オヤジに対して 愛情を抱いている感じがあるのも「判る」。
そんな ヘンテコな「夢」を週イチぐらいのペースでズっと見続けていましたそうな親父は。
『ほんでナ リク坊。ワシ大学も中退したやん?加賀テツヤさんとこのバンドでギター弾いてたンやけどナ、或る日・・・加賀さんが、《今日から これら女のコにバンドのダンサーして貰うことにしたから》って、3名の女のコ連れて 楽屋に入ってきてナ・・・』
当時の「ゴーゴーガール」って商売ッス
『で・・その3人の中の 1人のコと《偶然目が合った》・・・【 こ・・この・・この目やんかっっ!!夢でワシがズ~っと うなされ続けた《目》は!!】ナニ?その女のコがダレやて?・・・ぶっちゃけ 他でもあらへん・・・【ウチとこの お母ちゃん ヤ】・・』と。。。
「怪談」とは、ぶっちゃけ そのモチーフとなる 「元の現象」は、数えきれないほどの量 【在る】のでス。
この「怖い目」にズっとうなされたお父ンはチトだけ不憫(笑)
ただ「それ」が、科学的に解明出来なかったり、場合によっては 経験している当事者が どのような因果とかが そこに関係しているのか?
そういったモンが「てんでわからないまま」そういった「端切れ」みたいな事象は どこにでも転がっています はいーー。
息子のリクめは 10倍は愛らしい(??)
(^^;;