やはり 雨のそぼ降る とある夜の遅い時間・・・
「今日はなんだい??ふたりとも のっぴきならない雰囲気だな おお怖い怖い(笑)」我楽は笑っています。
場所はいつもの『ひさご亭』 ママさんは ロックアイスが切れて 買出しに行って我楽 それとリクめと八百政がお留守番です。
八百政「・・・すいません。どうしても・・・自分としての【回答】が出なくて・・・」 我楽「へ?なんの答えだい?」
リク「八百政は口下手やからワシが言いますワ。率直に申します・・・ジツのところ わたいら二人とも、アンタのこと・・【本物の超能力者】やないか??ってニラんでますのヤ ええ・・・」
我楽はおどけるような仕草で・・・「えぇっ??オレが超能力者だって??だったらナンで?この道30年を越えて 未だに売れない ウケないチンケな奇術師のままなんだヨ?あんまり買いかぶりなさんなって 笑うゼ♪」
八百政「・・・ボクから言わせてもらうなら、【観客に気付かせないからこそ あなたが本物の超能力者だ】と申しているのです・・・」
「ふ~~・・・」っと ひとこと大きくタメ息をついてから 我楽は・・・
「ぶっちゃけ・・・否定しても、チョっとやそっとじゃ納得しないようだナ・・・」
我楽はふいに「な?トランプしねえか?ポーカー、ノーマルルールの一回勝負だ。それが終わったトキに・・・なんか面白い事が起きてるかもヨ♪」と いたずらっぽく微笑んだ・
テーブルに配られた 5枚のトランプカードを手元で開いたとき・・・ぶっちゃけ わたいは『・・・仕掛けやがったナ この親父』と思いました はい。
手札は・・・ハートのエース 同じくハートの10・・・で またもやハート・・・ジャックとクイーンの11,12が揃っているではありませんか・・・
あと ハートの13 キングが配られてきたなら、それはポーカーにおけるエベレスト【ロイヤルストレートフラッシュ】
ぶっちゃけ ゴルフのホールインワンを上回るといわれるほど、実現性の薄い マージャンでいうなら最高役萬、
偶然でこんな手札がシャッフルされて配られてきたと信じるほど リクめは お人よしのシロートじゃありません・・・。
横に座る八百政を見ますと・・・彼もやはり 相当の良い手が配られた模様、カードに目が釘付けです。
しかし・・・セコいとはいえ、プロの手品師の我楽に 正直 おちょくられているとはわかっていても・・・
・・・・・ぶっちゃけ 負けたくない・・・ってより・・勝ちたい!! 贖い切れないリクめの【強欲な本能】が無意識に蠢き始めて・・・。
「リクさん カードチェンジは?」 我楽の問いかけに 「一枚で・・・」
すると親である我楽、「テメエで取りナ ヤマから1枚」っとヤル気もない声で。
・・・ふと・・・まことにセコい自分がココロの奥底より登場してきて・・・『ヤレよ・・・あの技使っちまえ・・・わかりゃしねぇって♪ できるだろ?指先の器用さにゃ定評あるオメエじゃんか♪シロートの八百政と セコ手品師の我楽をダマすなんてオメエなら訳ナイじゃんか・・・』
うるさいダマってろ!コレはナ 我楽が仕掛けた《罠》ヤ!【フリップ&フラップ】・・・得意のイカサマ手、ワザとに左手を使い・・・一番上のカードを引き抜くのと【同時進行】で・・・
目端をつけておいた 2枚目以下のカードを 弾くように【抜き取り】・・・他のライバルに気付かせることなく手のひらに隠し・・・
フラップ・・・滑らせるように腕の上部方向に送り、時計のバンドの部分で隠すと同時に固定する・・・。
正々堂々 勝負したろヤないケ・・・果たして 万が一にでもハートのキングがきたなら それこそが《運》やがナ。
だが・・・《誘惑》が一瞬 勝った・・・・・。
『それでは手札開陳』
たしか ハートのキングは上から13枚目にシャッフルされて鎮座してる筈・・・
リクの左手は悪魔の左手となり・・・カードをフリップ・・・。
飢えたサバンナの肉食獣の目でカードに食い入るリク・・・
し、しくじったゼ・・・
ああ・・・ よりによって・・・こんなトキに【 ジョーカー 】か・・・。
思わず 落胆するリク・・・すると・・・そのトランプのジョーカー・・・それが突如っっ!!『 わ~~はっはっは~♪ 』と・・・
カードの中で 動き出し リクを嘲笑いはじめて・・・っっ!!ジョーカーがささやく・・・『リクちゃんヨ アンタもやっぱ人の子だナ♪思ったとおりで笑うゼ まったく』嘲笑うジョーカーの声は 【 我楽 】・・・。
こんちきしょー・・・からかってやがる・・・カードのジョーカー・・我楽は、クロ紋付の羽織袴、いつもの寄席の高座スタイルでクルクルと傘を回しながら・・・。
ハっっっと 目が覚めた・・・ええ? 今のトランプ勝負は 一瞬の《夢》だったか・・・
横の八百政を見ますなら・・・やはり彼も 一瞬の・・・【リクと同じ夢】を我楽に見せられたようで、顔面は蒼白となって 大量の冷や汗をかいています はい。
我楽「・・・・・な?説明は不要だよナ?それほどの野暮じゃねえべ?」
・・・ヤラレちまったゼ・・・完敗だ・・・。オマエは超能力者か? ぶっちゃけそれに対する完全無欠の回答だワ・・・。
たしかにそうだ・・・問われた質問に、答えられないモノはダレにだって《在る》
なんかわかってきた気がする・・・。超能力者 松旭斎 我楽・・・このおっさんだって 斬れば赤い血が出る リッパな《人間》だ。
さっき我楽がわれわれに仕掛けた夢のフェイク・・・あれこそが彼の《苦悩の告白》だったに違いない・・・。
手品師としてマッタク手が出ない かつての我楽は、自分の身にうまれついた超能力を使うって・・・
『それを 持つ者がゆえの苦悩・・・』
その・・・【禁断の扉】に手を出してしまったに違いない・・・。だからこそ 八百政の云った【どうしても解けない奇術のカラクリ】。
と同時に・・・もっともっと大きな《恐怖》が彼を襲う・・・「超能力者」という、中世のヨーロッパでいうなら《魔女》。
ぶっちゃけ 人間の文明社会では コレ以上はないってぐらいの《異端の者》・・・世間の好奇心ダケではなかろう、かならず・・・我楽の能力を悪用しようと考える《わるいやつら》が続々押し寄せてくる筈だ。
それ 魔の手から逃れるため、我楽は《あえて》・・・巧妙ではあるものの 華のない、《いなたい奇術師》のキャラを演じ、闇の手から逃げていたのだ うんそうだ・・・。
やがて我楽が おや?っと思うぐらい 穏かでやさしげな口調で・・・
「なぁ リクさん。ひとつアンタに頼みがあるんだが・・・いいかな?」
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ハマの町から・・・《我楽は消え去ってしまいました》モチロン・・・自分の奇術で消えたのではありませんヨ(笑)
あの夜の 我楽師匠のリクへの【頼み】・・・
我楽『リクさん 《逃れの街》を紹介してくれないか?』・・・・・
「荒くれ事件ファイル」の【それに触れてはならぬ・・・】に登場した舞台、大岡川河口脇の あの【夕凪荘】のことです はい。
ぶっちゃけ あそこは・・・現代における《辿ってきた自分の足跡を消す》・・・いうならば【逃がしのプロ】
超高度な政治的判断(笑)により、警察は所轄、県警も あえて見て見ない「見ざる 聞かざる 云わざる」施設。ヨコハマが「魔都」である一種の証明なんですが。
土曜日の遅い午後・・・リクめと八百政、山下公園の岸壁に隣接したベンチに腰掛け 缶コーヒーを呑んでいました。
ふたりとも無口のままです、やがて沈黙に耐えられなくなった 八百政が・・・
『・・・我楽さん・・・《消えちゃったんだね 見事に》・・・』と。
わたいは「ああ・・・。なんせが あの《夕凪荘》の仕事ヤ、手落ちはあらへんデ。しかしホンマ 見事に消えよったナ あの《魔術師》」
「うん すべての足跡を消して 追跡不可能で消えた。もはや我楽さんをダレにもつかめないだろう、コレが犯罪だったなら まさに《完全犯罪の成立》」
「そやナ、・・・おまけとゆーか・・・あのオッサン な?」
「うん・・・ぶっちゃけ《ヤルもんだ!》 あの・・・【利恵ママといっしょに 手に手をとって 消えた】・・・」
つい先日 ひさご亭に行きますと・・・ドアに張り紙『事情により しばらくおやすみいたします』
中にヒトの気配がするので ソっと入ってみますならば・・・
カスミ、彼女が呆然と立ちつくしておりましてネ・・・
「どないした??」
「・・・叔母さんが、利恵ママが、・・・我楽さんと【駆け落ち】しちゃった・・・あとのことは頼みます、店も続けるなり 売っちゃうなりカスミ、あんたの自由にしていいから って・・・」
カスミとしばらくの間ヨリが戻りまスて いひいひ♪(^^;
・・・ぶっちゃけヤリよんナ・・あのいなたい寄席芸人のオヤジめが ふっふっふ・・・
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「なあ 八百政よ・・しかし、我楽さんやけど・・・なにゆえ あんなにも 自分が持つ《能力》を 世間がそれに気付くってのを畏れたてたのやろか?」
八百政治は「うん・・・それなんだが・・・小耳にはさんだハナシがあるヨ」と・・・。
リクさん オイラは常々思ってるんだが、【超能力】ってのはサ、たとえば ユウレイや妖怪ってものとは異なると思う。
要するにだ、不可思議に見えますが それは我々全員が【タテヨコ高さの 3次元】でしか物事を捉えられない宿命をもってるせいではなかろうか?? と。
3次元を完全に上回る【高次元】の世界がソコに開けるなら、我楽の【解けないトリック】は完全に科学で解明できるって信じる。リクさんも そう思うだろ??
・・・アメリカ行政機関・・・っていうなら、だいたいドコか?想像つくと思うけども・・・
どうも、世界中に網を張ってサ・・・要するに【3次元では解明できない特殊能力を持つ人間】をピックUPしてファイル化してるらしい。
冷戦の時代 当時の ソ連がESP(エスパー)の実験を真剣にやっていたのは有名だけど、なんとんことない・・今現在 アメリカが、いずれ国を揺るがしかねない脅威、もしくは 自国にとって有益な
・・・【人間兵器】として利用しようって目論んでいるっていうハナシ・・・
考えれば・・・あの我楽さん、どれだけ厳重なボディーチェックをしたところで、【ナニもない虚空から 小さなナイフを取り出したなら】ぶっちゃけ 大統領だって暗殺は容易に可能だゼ?
・・・それにだ・・・今回の【松旭斎我楽は本物の超能力者なのか?】を・・・
盟友 八百政に依頼をかけたっていう、【国内のとある財団法人】ってのも どうにも気になるわナ・・・
予想でしかないけど・・・おおよそ 某国、それも超大国のなんらかの諜報的な組織の下請け機関の 隠れ蓑なんだろうと思う。
今回に限って、当の八百政の どうにもヤル気を感じさせないダレた調査姿勢は、きっと・・・
好感を抱く あの我楽さんを、心ならずの状況に追い込むのを躊躇してのことなんだと 終わった今 リクめは思えるのだ・・・。
そして おそらく我楽さんは、そんな自分の能力の【危険さ】を充分わかっていたんだと思う。 と、同時に イチ人間 松旭斎我楽が、いかにチカラもなく ちいさく弱い存在かってこともネ。
《特殊な能力》・・・それを持つ者 我楽が、持たざる者 平凡な人間に【武器】として使った場合、どんだけの悲劇と惨劇が待ち受けているか・・・それもよくわかっていたんだと思う。
だからサ・・・我楽さん《もう テメエがこの場所から 消え去っちゃうに限る》って そう思ったんだ うん・・・。
ヤバい事ってのは それが仮に米国合衆国が主催だろうと 【ヤバいものはヤバい!他となんら変わりない】・・・
そんなものに 自分の能力が悪用されるのが なによりもイヤだったんだと思うよ 我楽さんは そういうヒトだ あのヒトは。
・・・・・ なんたって 【ハマっ子】だもん あのひと♪
あと・・リクめには1つの【確信】がある・・・。
それは 我楽さんの【出身地と家柄】・・・わたいのばやい 熊野で発祥した先祖が戦国時代の鉄砲集団だったり 江戸時代の忍者だったってことが、ホンの少々でも、その末裔であるリクめの チョイとばかり波風の多い人生に影響を与えているとするなら・・・
我楽さんに ひさご亭で飲んでる途中で尋ねて確認した あのひとの出身地・・大和国葛城上郡茅原(現在の奈良県御所市茅原)だって事実・・・。
あそこは、飛鳥時代から奈良時代にかけて・・・日本における 修験道の元祖であり、日本最大の【陰陽師】である【役(えん)の小角(おづぬ)】が出た場所そのもの・・・。
両端を固めるは【式神(使い魔)】
あの有名な 時代は異なるけど 平安期の陰陽師の大スター 安倍晴明でさえ、100年以上前に役小角がかけた【呪い】をとうとう解けなかったって、正式な証拠文献さえ残ってるんだ・・・。
おまけに・・・我楽さんの本名の苗字・・・《こずみ》と読まれてるそうだが、【小角】だと・・・・・。
ぶっちゃけ・・・『こういう血筋のヒトが普通のヒトである訳が無いっ』それがわたいなりの結論、科学じゃないんだ!現代科学では未だ解けないロジック・・・。
八百政がボツリと・・・
「例の・・財団法人への報告書の件なんだけどネ・・《調査目的の真偽、不明のまま 調査対象人失踪により、真偽は不明なまま【調査不能となる】》で通そうと思うんだ。我楽さん、ボク個人としては信仰に近い【ある確信】は在る・・・だが・・ぶっちゃけ それがなんだっていうんだ??ドコに価値アある?そんなものを《暴いて》。それこそが、我楽さんがイチバン望まないダレひとり幸福になれない暴挙だって思えますしネ・・・」
うんうん そうだ・・・そうに違いない それが良い・・・。リクめもそう思う。
あの いかつい四角いカオのオヤジ、ぶっちゃけアレだけ やさしいヒトは 探してもそうは居らんサ・・・。
おそらくは・・・【ダレにも この町のダレにも迷惑かけたくなかった】のやろナ・・・水臭いな あのくそオヤジ・・・チョっとぐらいボヤいくれたかてエエやんか! やせ我慢しやがって ちくしょう・・・。
でも・・・ファンタジーとしてなら こうも考えられる・・・
なによりも替えて 松旭斎 我楽 一世一代のイリュージョンってなら・・・
ぶっちゃけ コレをおいて他にはなかろ? あの・・・「ひさご亭」利恵ママをゲットして【ランナウェイ】したことヤ あっはっは♪ ヤリよんナ♪
風のウワサでは 貨物船でナホトカ航路で大陸に渡り、欧州まで横断するツモリなんやろか?大陸のどっかちいさな街の路地で 演芸してるのかもナ♪
・・・一瞬の夢想の中に 我楽師匠がいる。
オリエント急行ラインを辿りながら 利恵ママと手をつないであちこちを巡り歩く姿が・・・
そこはどこだろう?・・・おそらくはバスク地方の片田舎の路地裏で、大神楽の舞台衣装の我楽さんが、地元の村人相手に、
お得意の 傘廻しの芸を『東西(とざい)東西(とうざい)~~♪』の掛け声とともに演じている 【夢】・・・。
リク「うん・・・八百政ヨ、今回は おつかれっ! そろそろ帰ろう、もうスッカリ秋ヤなぁ・・・」
あの我楽のオッサン、【超能力者】や【サイキッカー】なんて言葉で称するのは ぶっちゃけ野暮ってモンやデ。
・・・あのヒトこそが・・・このハマの街の路地裏に咲いていた ホンモノの【 魔術師 】だったのやから ♪♪
相変りませずの長文 失礼いたしました はい