社長室のドアを開ける前に 携帯電話スイッチをOFFにする。意味があるのサ それは後で説明する。
ノックを4回 中から『リクか? 入れ』と社長の声。ドアを開けますと もう、中には 夜逃げのキンさんと、経理の主任 エロ川さんが既に。
「現場のクレーンから直行かヤ?メシまだなんやろ?スマンの・・」と社長。「いえ、 って・・どうせまた、空腹忘れるよなハナシでおますのやろから」っと苦笑して答える。
「問題は例の・・・イタリア《ピエトロSS社》やねん・・」 「やっぱ《飛びましたか?》あっこ」
「いや・・まだ《飛ぶ》まではイっとらへんのやけどナ、ある意味 もちっと厄介というか・・・」
社長は紙コップ入りのエスプレッソを飲み干し「うえ・・苦っっ・・SS社がウチとこの社に今週中に支払う筈の決済代金、ぶっちゃけ それ《チビっと待ったれヤ》って・・・カナダ経済省発行の《信用保証書》が届いてヨ・・・」
「それアリなんでっかいナ??・・・典型的 迂回の和議申請ちゃいますのそれ?カナダかどっか知りませんけど、ウチとこと、SS社の代金決済については、たとえ政府筋だろうと、カナダなんざ 第三者に過ぎないのとチャイますかぁ??」
「問題はそこやねん」っと社長。「SS社の独占的な支援銀行ってのがナ、イタリア第3位の大手銀行のモンテパスキ銀行なんやけど、SS社がヤバいってより、そのボンテバスキ自体がワヤっていうか、続々と地方を中心に《取り付け騒ぎ》が起きよってナコレが・・・」
「ンなNEWS 新聞もラジオTVも出てませんが・・」 「ふん!おおかた《報道しない自由》ってヤツやろクソが!。要はナ・・今般SS社が御社に ウチとこ社やナ、支払い期日を遵守不能に陥るのは かくの如くSS社に問題等発生したわけではなく、主力銀行の混乱によるせいだから理解したってくれヤって保証書の内容で」
「それはわかりまっけど。ぶっちゃけナンで?それを他国のカナダが?回りくどい真似を・・」
「回りめぐるってのが《経済》ヤ。要はアレやろ?そのモンテバスキBANKに、カナダから かなりの《貸し》ブッこんでる構図がアルってことやろ うむ・・・ババ抜きヤ・・テメエとこの資金回収が済むまで 他の支払いで潰すのんは許さん!ってハラや。リク、カナダへの移民でいっちゃん多いのはドコからヤ?」
「・・・ぶっちぎりで チャイニーズ・・中国圏でおま・・」
香港・・じゃないス ココは「トロント」のチャイナタウン・・・
「そや。香港の中国返還でドっと増えよったわナ。今じゃあ バンクーバーの人口の25%が中国系住民・・《ホンクーバー》って陰で呼ばれる始末ヤ。要するに 元を遡るならば《チャイナマネー》が、EU圏に中国系らの資産の置き場所として、相当額が投資されてルって なによりもの証拠ヤ。おおかたその筋がカナダ政府焚きつけたンやろナ。自由主義経済を維持するってたいそ~な謳い文句やけど、アホくさ・・テメエが注ぎ込んだカネ守りたいダケやがナ」
「全世界の嫌われ者」ユダヤも絡んでるだろ~・・
キンさんがクロレッツをペっと吐き出して「《カネがないんじゃなくて、今 預金を動かせない状態なんだ》って言いたいようだがやっこさんらはヨ。はいはいさようでございますかって程、余裕アル会社かウチは?」
エロ川「とりあえず・・今月分の社員給与は問題ありません。来月分も まあなんとか・・。でもSS社からの決済分が見込めないってなると、特別会計での預託金口座を取り崩す必要が。・・・そうなりますと、保証金の額が足りなくなって・・・」
社長「そう・・・ウチとこは海外貿易しようにも、肝心の《インボイス》(貿易信用保証書類 特定の国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ等)へ輸出する場合に必要な書類)の発行を見込めないって どエラい状況が発生してマジで潰れかねん・・・」
こら韓国!サッサと賠償金払えアホンダラ!!
キンさん「忘れちゃいけねえって・・ロイズ社の《船舶保険》も引き受けてくれなくなる畏れも・・・そんなんじゃウチとこの船、韓国あたりのボロ貨物船と同じランクだって扱われちゃうゾ」
・・・チトばっか 専門用語の羅列でアタマがこんがらがるでしょ~から わかりやすくハナシをはしょるならば・・・
2015年に起きました いわゆる『 上海株式相場ショック 』それが与えたダメージというのは、中国国内にとどまらず、
距離的には遠く離れた 欧州にまで大きな激震を与えたのでした はい。
元々 財務の内容がハッキリいってメチャクチャ!ってか・・EU参加の国の中には ぶっちゃけ「かなり帳簿が信じられない国」ってのがありましてネ、
国や公共の行政機関が発表する「数値」ってのが、コレが正直『完全に 盛ってる・・』モンだから、
早いハナシが、その国の企業ほとんどが 【粉飾決算】みてえな有様で(--;
それでも、大事が起きずにノホホンとした状況が続くならば容易に「ボロは出ない」・・・
ですが、上海ショックのような激震が起きますならば、たちまち!ジツのところトホホな状態であるテメエの財務状況が明るみに出て 大騒ぎ!ってなるのですナ うむうむ・・・
いつまでも踊ってやがれ!白人の『阿呆ども』
で、1機十数億円って価格の、工業機械を数台以上、ウチとこの社が仲介となり、日本からイタリアの SS社ってところに売ったのですが・・・
肝心の「代金」が いつまで経っても支払われない・・・ウチとこも コレではたまりません!(><)
で 連日 やいのやいの!の督促を続けてましたなら・・・
なんと!SS社は・・・カナダ政府よりの信用証書・・要するに『この世界的経済状況なんだからチョっと待ってやれヤ な?わかったな?』って・・(--;
ぶっちゃけ「それ」寄越してきやがったって ていたらく。
なんか・・飲み屋でケンカしてたならば・・ゼンゼン関係ないヤクザが『そのケンカ俺が預かったぁっ!!』って、頼みもしないのにしゃしゃり出てきたってのと変わりません うむうむ・・・
「ああ困ったナ・・」ってなってます 当時の我が社。。。
『だったら 銀行から一時つなぎの資金 借りればいいじゃないか』・・・単純に考えれば「そうです」 はい・・・
自慢ではないが それを選択できるだけの実績も信用もウチとこの社には「有る」。
小口の借金では済まないのが企業の「辛いところ」。。
ですが・・・・・そんな何十億円って大金借りて、利子さえ払えば「それで済む」って訳にはいかないのが この浮世の「やっかいなところ」。。。
ぶっちゃけ メガバンクは『貸付に対するバーター条件』を突きつけてきます・・・
うちの社のような形態の場合、『次の人事で 《外部役員》の拡充(増やせってこと)』ってことでス はい。
要は 銀行が、『オメエとこの会社は旧いンだヨ!いつまでも個人商店みてえな人事の布陣してんじゃねえヨ、オレらが推薦する役員入れて 全体をガラス貼りにするってならゼニ貸してやんゾ♪』ってこと・・・。
「コンプライアンス」??喰うてウマいんかそれ?(けっ!)
も~~おわかりッスよネ?? つまりが『銀行筋の人間を 天下りで受け入れよ』って、反強制命令に等しい・・・
ぶっちゃけ・・明治以来でス、少なくとも日本の巨大銀行グループは このような「手法」にて、市中の数々の企業を「おのれが傘下」として 飲み込んではデカくなってきたのです はい・・・
そういった意味で 日本って国はまさに「銀行国家」っていえます はい。
巨大メガBANKと「国家体制」ってのが、一蓮托生で どこか繋がっていることで安心できるって形態。
戦国時代の ぶっちゃけ海賊だった「水軍」から、徳川の治世で回船問屋へと姿を変え、明治以降に 現在のような「海運業」となった 文字通りの『荒くれ』・・・
ウチらのよな「巷から湧き出た連中」の会社は、けっして規模ではなく、この日本を牽引しているって自意識でいるエリート様からするなら、『放っとくとナニするかわからん信用ならない連中 だから我らが常に監視する必要がある』って、どうやら本気でそう思っているようで・・・。
ってか・・・ぶっちゃけたところ 既に・・・ウチとこの社にも 複数名の「執行部役員」は、表向きは省庁 官庁って、公式ラインからの出身ってなってますが・・・
その「実態」というならば、その天下り役員らの 首輪のリードってならば・・・それは「銀行筋」がキッチリ!握ってるって寸法・・・。まさに「走狗」でス。
キンさん「これ以上 銀行屋出身者受け入れるのは、マジでテメエのクビ絞めることになりますゼ社長・・・」
社長「そ~よナ・・今ですら 重役会議での多数決、ギリギリの比率なんやから・・・。ヘタすりゃ逆転されちまってからに、ワシなんか真っ先にほっぽられる可能性も。ハマ一番の 荒くれ野良犬海運が 銀行屋の飼い犬に転落ってか・・・ナミダ出てくるワ」
・・・そうなんだよナ~~・・会社って組織の中に、バクダン抱えてるってか、有る意味で《敵を飼ってる》のが、株式会社のツラいとこだわサ(--;
「とりあえずの身内」だって、100%信用出来るものか・・・現に、社長の娘婿 サダヲは、生家たるやバリバリのお役人&メガバンク役員一族の出身・・・
ぶっちゃけ「鎌倉幕府」に引導渡したのは 源頼朝の正室「政子」だ・・・。カノジョはとどのつまりが、最後まで「源」ではなく、出身である「北条家」の人間だった。北条にとって 目の上のタンコブだった源氏を滅ぼすための尖兵役を政子は見事に果たしたってジツに皮肉・・・。
おっとり構えてやがるノンキ者って見せてやがるが、ぶっちゃけ いつ・・牙剥いてくっかわかったモンぢゃねぇ・・・サダヲ。
社長「ってかナ・・・ったく!ドコから聞きつけるものかヨ?? も~既に《なんならご用立ていたしますヨ♪》って・・さる銀行屋からの打診がワシとこに届いてる・・」
キン&リク「マジすか??」
社長「うむ・・で・・ココからが内密のハナシやて キンにリクよ・・・」
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「なんかウマくいかない・・・ぶっちゃけ アカンやんか最近・・・」ついついボヤきたくなる。
「オレもだ・・・遂にカンがニブってきたかな?オレらコンビもよ・・」キンさんもボヤいてる。
『銀行屋の食い物にされたたまるかヨ!』ってんで・・・
要は《その他の 代替手段》ってのを アレコレと模索し、現実にアチコチへと内密に打診もしてみた わたいら・・・
ですが・・「駄目」なんス・・・ぶっちゃけ 行く先々で、マルで「先回りされたように」・・・
ボクらが描いたはずの目論見の扉は見事に「閉められていて」・・・。
キン「なあ?・・・思わないか?オレらがアレコレって策を練ってる会話・・・《盗聴されてる》って疑念が?」
『まさか!』・・とも言い切れない・・・
リク「やぱそない思わはりまっか?《まさか!》って、否定するダケの根拠もナイですやん?ウチとこも社内の状況はけっして全員一丸とも云えへんし・・・」
キン「どうなんだ?こないだリクが稼ぎ出したチャイナからの乾燥大豆での儲けは??」
リク「ンなモン・・・とっくのと~に、物資買付けの資金と、運転資金で消えてまってますワ・・。」
キン「そうか・・・タイミング的にも最悪の時期に上海ショックがきやがったよナ・・」
リク「マジでヤバおまっせ・・直近中に SS社から入るはずやった額が調達出来ひんと、ぶっちゃけ・・ウチとこの《株価に影響が出ます》」
『メキシコなら』ってのが なんともトホホかも(^^;
キン「な? いっそのこと、オレら2人で、どっかからゼニ引っ張ってきてヨ♪ウチの社の株《空売りかけねえか?》ビバリーヒルズは無理でも、アカプルコあたりなら一生遊んで暮らせる儲け出るゾ(笑)」
リク「ホンマですわなぁ(笑)それ考えると笑いがとまりませんワ♪」
それにつけても金の欲しさよ。。。
キン&リク『・・・それを実行できる度胸と、その手段を許すプライドがあればなんだがナ~~・・・』
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やってきやがったか 銀行屋が・・・
お~お~!副頭取の お出ましとはアイツらも本気(マジ)ってことか・・・。
随伴してる なんかヒトの良さそ~なロマンスグレーのアイツが、次の人事での「役員候補」って訳か・・・。
こちとら「ワル」だ、騙されねぇゼ・・・上品そうで、いかにもヒトが良さそなヤツほど・・・
ナチスドイツ勤勉優秀なる「殺人鬼」アイヒマン
テメエの首のリードを引っ張る ご主人さまの為なら、どんなエゲつない裏切りも切り捨ても平気なツラして実行する そんな人種なんだからヨ・・・。
『キンとリク呼べっ!!アホ!今スグにヤ ぼやぼやすんな!!』
イラついてます雰囲気の社長に呼ばれ会議室に。。。
社長は「あかん!ぶっちゃけ《すべて読まれてるワ!》・・・銀行は今ウチとこが陥ってる窮状、全部キャッチしとるデ。いよいよ迫ってきよった。見たやロ??商船●井の元・東日本総責任者だったって あの上品そうなオトコ・・次の人事で執行部役員に据えませんか?そうするなら満額、融資実行スグにしてやるとヨ・・けっっ!」
リク「そ、それ・・受けるンでっか??」
社長「アホっっ!!ンな!首吊りの縄 テメエで買いにいくってか!?アホいうな!それやったなら呼ぶか!オメエらを」
キン「・・・なるほど・・銀行筋の目論見がハッキリしましたナ・・これで」
リク「ちっきしょ・・・銀行が《女衒》になって、ワシらを商船●井に売り払うって算段かヨ・・・」
社長「そや・・。ぶっちゃけたとこ、ウチの社《目障りでジャマ》やから、銀行の直属傘下ってリスク抱えたくないから銀行も・・商船●井の《事実上の子会社に仕上げる》アッチ側の目標はそれよナ・・」
・・・タイヘンだ。。。もしも「そうなったなら」・・今のウチの社の執行部は軒並みリストラ・・・「放逐」だ。
腕と度胸で数々の荒波渡ってきた社長なんかは 真っ先に駆除されるだろう・・・
それに、キンさんとワシ・・社を守るためなんやけど こないな《汚れた社員》は、新規体制でのクリーン・イメージ確立のため ポイ捨てされるのは鉄板予想だ・・・。
「リク! 八百政呼べっっ!!」社長が言う。「え?ナニゆえ 八百政を??」
「わかとるやろ?コレはもう あきらかに・・・昨今のワシらトリオでの秘密戦略会議の内容【だれぞに筒抜けに聞かれてる】・・・盗聴器がどこかにアルんヤ。それ捜させヤ」
キン「それでしたら、大手興信所とかの方がてっとり早くないスか??」
社長「案外わかってへんナ キンよ。いいか?大手の興信所にとって、最大のクライアントはぶっちゃけ《銀行筋やゾ》・・毎年の社員新規採用での身上調査業務で完全に手なずけられてルやないか大手は」
キン「そっか・・・ウカツでした」
・・・やっぱ社長・・伯父ちゃんはキレ者だ・・・。かつては その大手の興信所のエース。体質に完全に嫌気が差してヤメた 盟友 八百政こそが、今ワシらにとっての「切り札」だ。
あんじょ~頼むデ!
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『お~~っ!出るわ出るわ♪ココにもアリましたヨ 盗聴器』
呼ばれてやってきた八百政は、会議室 社長室それに応接室 事務系女子ロッカー室それらの場所から次々に、「盗聴器」を発見して。
八百政「ぶっちゃけ どうするこれらの盗聴器?盗聴器ってジツは案外、性能がマトモな時間って短くてネ。発見したおよそ半分のモノはもはや使い物にならない注意には及ばないゴミでしかないんだけど、あきらかに作動しているモノもアル」
リク「だけど・・《どうする?》って・・逆にどうするのヨ??」
八百政「勝手にこんなモノ仕込みやがってムカつくだろ??当然に。おっ外して捨てちゃうよりも、会話とか盗み聞きしてるヤツら 逆にコッチがムカつかせてやんないか?」
キン「どうするんだ?」
八百政「この盗聴器ってのには必ず《発信周波数》ってのが存在しますからネ、盗み聞き相手がこの周波数に合わせたなら・・アッチ側の再生スピーカーから、エンドレスで 関係ない音楽とかが大音量で流れるって、どうです?そういう《悪意のイタズラ》が可能なんですヨ♪」
社長「わはは!!そらおもろいナ♪ それ是非ヤっとくれ!頼むワ♪」
八百政「曲のバリエーションはどうしましょうか?」
社長「うん!《河内音頭》流したれヤ♪ あと《嘆きのボイン》なんてのもエエわナ♪」
♪ボインやでぇ~♪
全員『 いひいひ♪ 』
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イチハラだったなら きっと云うだろう・・・唇を皮肉に歪めながらジタンをくゆらせて・・
『リクよ、試合が長引けば長引くほど、相手を見くびることが致命傷になる。相手が相手だと、ついつい油断してしまうだろ?だから、事務員のオジサンは、殺し屋に適している。』
そうだよナ・・・読めてきたデ 段々と・・・。
盗聴器を発見・・・「それでもダメでした」 はい。
筒抜けに情報が流れるペースがホンの若干遅くなったダケ・・・行く先 実行しようって手段は「次々にオジャンとなり」・・・
そうなってきますと、次第に生まれてくる「疑念」・・・『 会社の中に《スパイ》が居るかも・・・ 』
サダヲ??・・イヤ違うだろう。ぶっちゃけそれは「買い被り」ってモンだ(嗤)
それこそ よっぽどの楽天家でない限りは、あんな《屈託もない おしゃべりクソ野郎》を斥候兵として登用するアホな居らんワ。
しょせんは宴会部長の器なんだワ。。。
わからへん・・・こうやって疑心暗鬼に陥るってのも考えものやデ、おそらくは仕掛けているのは【銀行筋】の者だろう・・・
社長にキンさん そしてワシ・・この3名の動向が集中的に狙われているとみて間違いなかろうって。
『 そうだ・・・アイツに会ってみようか・・・ 』
「久しぶりやナ クロサキよ」 「20分ダケだ」
気を利かして シチリア島イタリアンのこじゃれたレストランを選んだツモリやったのだが、
のっけにひとこと 公安のエージェント《クロサキ》から釘を刺された。
『今後覚えておけよリク。任務遂行途上のエージェントをこんな・・《料理の香りがくっつきそうな場所は避けるのが儀礼ってもんだ》』と にべもなく。
「なんぞ食わへんか?オゴるデ今日は」 「最高級のEXヴァージンオイルとガーリックの匂いプンプンさせながら、今オレの潜入先、工事現場の飯場宿舎に戻れってか?明日の朝になるまでにコロされちまうワ(嗤)遠慮する」
ジンジャエールを前にして 気まずい雰囲気で。
リク「クロサキよ、チトばっか教えてほしいのはだ・・・。組織内部に忍びこんでいるかも知れへん《スパイ》・・・そいれ 炙り出すには ぶっちゃけどんな手が有効だ??」
クロサキはチョっとだけ 首を傾け 数秒考えてから・・・
「どんなに警備が厳重なビルでも、100%安全とは言えない。ビジネスに人の出入りはつきもの。取引先も来れば、修理や作業員も来る。最新の警備システムを誇る会社でさえ、社員の危機管理は驚くほど甘い。置きっぱなしのカードキーやバッグ、パスワード書いたメモ、指紋がベッタリついた缶ジュース・・・ま、云えることは《疑いだしたらキリがない》ってこったナ」
そして こうも・・・
「スパイが《居る》としてだ・・スパイの部屋を調べるときは、金庫を開けるなんて時間のムダ。テメエならどこに隠すか考えれば簡単だ。スグ足元にヨ お手製のロッカー発見するぐらいの芸当 リクならお得意だろうが?」
リク「そっか・・。じゃ?もしも そのスパイの存在をキャッチしたならば ぶっちゃけ どないする??」
クロサキ「簡単ヨ♪逆にコッチから相手先に潜り込むのサ。警備が厳重なときほど狙い目だ。人が多すぎて、誰が誰だかよく分からない。場がゴタついてりゃ、より都合がイイ。たとえクビになったスパイが入り込んでもバレるわけがない。肝心なのは、《退き時の見極め》・・何か聞かれる前にとっとと退散することだ。」
そして去り際にこうも・・・
「オレら公安 潜入なんかも完全に《スパイ》だからナ。でも覚えておけスパイもナ・・・《それでも!誰かを信じなければ、スパイは長く生き残れない。追ってくるのが誰か振り返ってばかりじゃ行き先が見えないからだ時には、直感を信じるしかないってことサ」
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『エラいこっちゃ!!捻挫した上に さらに火傷した!みたいな展開ヤ!』珍しく あわてています社長 「どないしましたんヤ?」
社長「ああ・・・。ジツはナ・・前門にトラがおるのはわかってたが 今度は・・後門にオオカミまでが現れやがった・・・」 「ええっ??」
社長はつぶやきます・・・
あのナ・・水面下で ウチとこ社の株を 《TOB》(公開株式買い付け)進行させてる 仕手のヤツの動きがある・・・。
TOBは「株主」全員に対する公平性がアリません
目的?? ふん!きまってるやないか!表向きの理屈なんざ信用に値するってか(嗤)すべては、●●銀行筋が、ウチとこを 商船●井への《子会社化》を目論んで暗躍してるのに 相乗りして・・・
要は《地上げ》となんら変わらん!《企業価値を高めました》って物言いで、銀行筋にオプションつけて再転売して懐肥やそ~って寸法やろ。
問題は・・そのTOB実行の首謀者ってか、特攻隊長やナ、驚くなヨ・・・それがあの・・【 レイモンド・カークイ 】って もっぱらの噂ヤ・・・。
遂に登場・・・因縁の「ライバル」
・・・ああ~っ!!かなわんわぁ(泣)銀行筋ですら面倒でたまらん!のに、この上 あの あなどれんチャイニーズの《ワル》が相手だってか!!
むむむ・・・くっそ!ウマいとこ 目ぇつけやがったやないケ!カークイめが・・・。
こないだの 香港・マカオの作戦の際、カークイは、コッチとしての最大の切り札であり、ジョーカーのカードやった。。。
そのぶん、コッチの組織内容を必要に鑑みて開陳してまったからナ・・・。キレ者のアイツのことヤ、《コレはいけるアル♪》って、次の標的としやがったってか・・・。
キン「どうするヨ? リク??」
リク「正直ドタマがフリーズしとります(笑)も~~笑うしかありませんやないか?でも・・・打つ手はアル。」
キン「どんなだそれは??」
カークイとて「弱点」はアルのヤ・・・
リク「望みは・・・アイツ、カークイが《徹底した拝金主義者だ》ってことでス。情け容赦もなくコッチに攻撃を仕掛けるでしょうアイツだけど、逆に・・・カークイは、指令出してるクライアントに対する忠誠心なんてのは1ミリも無い筈・・・。弱みを握るか もしくは条件チラつかせて、コッチへ寝返らせる・・ぶっちゃけ その方法でしかこの苦境を脱するのは・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ははは♪ビンゴ!かけてる相手に、えらくまた強気で食い下がってくるアルね♪正直そのハッタリとブラフの姿勢はよろしい♪その強気の態度忘れないことアル」
大胆にも スグそばのハマのホテルに滞在していやがった レイモンド・カークイ・・・《香港の悪魔》・・・。
おそらく一生 使い切れないだけの隠し資産を有していながら 貪欲に利益を追い求めるコイツは、さしずめ「黄金の犬」です。
単にカネを欲しているのではない・・テメエの才能をフルに発揮させ 相手からぶん捕るって行為こそが、このカークイにとっては《世界最高の麻薬》・・それがコイツにとっての 生きがいなのだ うむ・・・。
今も ハネムーン・デラックスの大きな部屋 ソファーにふんぞり返って、コレも いかにも《カークイらしい》・・・カラダにワルそ~な ベトナム製のチープな「メコン・ウィスキー」を呷っています。
カークイ「それにしても・・ワタシら なんか前世の因縁アリそ~アルなリク?」
リク「ぶっちゃけ とても喜ぶ気にはなれへんわナ・・・」k
共に悪魔の相棒になれとスカウトだってか?
カークイ「ビジネスで大事なのは《作業効率》ヒトの人生でより大切なのは《タイミング》アルよ。な??ジョークでもフェイクでもなく言うが、リクよ【このワタシと 組まないか??】かなりいいコンビになるって思うゾ♪パシフィックオーシャン股にかけて大暴れしてみないか?どうヨ?」
リク「・・・《ガキの夢》・・としてはエラく魅力的やと思う。それダケだナ ワルいけんどヨ。」
カークイ「今の会社に しがみつくダケの魅力なんてなかろうに?なんでだ??」
リク「ワシはナ・・冷静にテメエの《程》と《分際》ってモンわきまえとル。カークイよ、アンタからすんなら ワシが今 所属する会社なんてきわめてチンケやって思うやろ?ある意味 それに間違いは無いが・・だがナ・・逆にいうなら《それだから!》こげな程度のワシってモンがヨ、様々な反発やら反感買いながらも、社の中枢部にまで上がれたんだワ。日本的な考え方だと嗤うだろうが、《組織あってこそのワシや》ってこと」
カークイ「ふむ・・そういうところがわからんナ典型的ニッポン人か?」 「わからんでエエよ。譲る気は無い《価値観》だからヨ」
カークイ「それにしても・・具体的にナンだ?? まさかこのワタシに、《TOB画策はヤメてヨ!》って泣き言並べたくて来た訳ではあるまいに」
リク「わかってるサ・・ビジネスの口論は丸腰でやるに限る。双方が銃を構えたままカッとなったら、ちょっとしたきっかけで殺し合いになる・・な?いっちょ ドライな《儲け話》耳を貸さへんかカークイよ・・・」
3杯目のメコンウィスキーのグラスを空け カークイは・・
「ふむ・・謹聴に値する ある意味の《名言》だナ。では聞こうか そのハナシとやらを・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんのことはない、けっっ!《すべてが一連でどこか繋がってやがる》・・・
インサイダーなんてモンぢゃあらへんがナ。むしろコレは、《結合(シャム)双生児》に近しいやないかって!
カークイに指令を出してる クライアント・・・突き詰めるならばそれは、
ウチとこに SS社の支払い しばし待ってやれって信用証書発行して寄越した カナダの中央銀行の筋じゃあねえか!ふざけんな!!
くっそ!本来ナンの関係も無いテメエとこが しゃしゃり出てきた関係で、ウチとしてはSS社に対して強硬な 取立てが現在不可能になってンだゼ!
ふん!とんだチョボイチだ・・・それによって資金繰りに苦慮するって事態に陥ってるウチとこの社の株式を買い占めて 最終的にウチの親会社となった法人へと高値で売りつけようって、完全なる《マッチポンプ》じゃねえかコレって。
翌日の晩 カークイのホテルの部屋を訪れると、ムダにだだっ広いベッドの上には、全裸の 2人のオンナが絡み合って抱き合っていて・・・
聞けば 電話コールで呼びつけた 在日のチャイナガールの《デリヘル嬢》母国語である中華ラングウェイジは理解できないので、どのよなヤバいハナシもOKなんだとか 念がイってやがるナ カークイ・・・
『どうだリク?オマエの素っ裸になって、アイツらと絡んでみたら♪ 見た目レズビアンの3Pみたいでそれはそれで見物だって思うが(嗤)』
・・・ふんっ ダレがテメエの趣味・・呼びつけた娼婦2人にレズ行為させては、抱きもせず帰らせて、さっきまでの構図を思い出しながらマスターベーションするのが なによりもの快楽だってゆ~、なんとも手の込んだAVマニアのテメエを歓ばせるツモリはねえヨ!
『 是 出場的椴判 因此我来了(ギャラの交渉にワシは来たのヤ) 』
直球のハナシでいくデ・・・
な?? レイモンド・カークイ・・率直に述べる。コッチ側へと 『転ばないか?アンタ』
ウヌボレと思ってくれて構わないが、アンタも このワシと完全敵対関係でバトルするよりも・・・
これまでのクサレ縁同士でツルむ方が この先考えて「得策」やと思わへんか どないヤ??
『成功報酬である金額の・・・13%増しならば そっちへと転んでやる』ってカークイを、『アカン!出しても 7%が上限ヤ。』って断言したリクめ。
『ハナシにならん!』っと拒否するカークイに・・・わたいは『・・・エエのか??今回コッチの切り札、探偵 八百政の情報能力甘く見たら ぶっちゃけ命取りやデ♪』と。
リク「1979年ってから かなりの昔やがナ・・4月の13日金曜日の深夜・・・」
カークイ「うん?ナンのことアルか?」
リク「おいおい 忘れたらアカンやんけ。カークイ、アンタ・・・日本のこのハマの街に滞在してて・・・中華街の名刹中華寺院の《横浜 関帝廟放火未遂事件》・・・ぶっちゃけ それの犯人【アンタやろが】!!」
カークイ「うぐっっ・・どうしてそれを??」
ベッドで さえずる2匹の牝の嬌声を聴きながら思った。カークイよ、今夜は後でマスかくどころの気分じゃなかろって(嗤)あんまり このワシとて ナメないことだ カラ手でこの場に来たって思ったか ふふふ・・・。
リク「忘れたか?(嗤)ココはそのハマやゾ。半分 干物になっとルけどヨ(笑)チャイナタウンにゃ まだ、生き証人 生き字引の《マオ老子》生きてはるの忘れちゃアカンって♪」
カークイ「あ、あれには深いわけがある!」
リク「それも知っとル・・・横浜 関帝廟は今まで5回以上も焼失してるけんナ。関東大震災や 横浜大空襲やら、放火も多い。1986年にもあった。なんせが、あっこの寺院は中国流儀の完全なル《現世利益の寺院》アレやてナ、願い事かけて お布施つんで、それで願いが不備に終わったならば、寺院に火をつけても あの世で罰せられないってゆ~ぶっちゃけ 中華思想・・。だけどあかんデ 放火は」
若き日のカークイの手痛い「失敗」・・・
カークイ「あんな マオのクソ爺いの たわ言信じるアルってか?アイツだゾ!!当時若かったワタシに放火をそそのかした親玉は!!本当だ!火災損害保険金狙いサ♪管理を一手に握っていたマオの爺いが、寺院の修繕費用をケチって、ワタシに《ダレも見てない深夜に火を付けよ》って そう囁いたのだ!」
リク「ああ、おおよそ そうだろうってワシはニラんでた。あのジイさんのことヤ、テメエの手エ汚すヘマする訳があらへんしヨ。」
カークイ「当時のワタシは、大金積んで 願い事した。だが・・もろくもそれは瓦解してナ・・手痛いシッパイだったアルよ。なので 火をつける資格はあったのだワタシには」
このジジいも「悪魔」だ マオ老子・・・
リク「正直・・わからへん理屈やけどナそれ。でも興味あらへんワシにはナ。だが・・よ~考えヤ?カークイよ、キミがいかにキレ者かて、ココは、そのマオ老子が君臨するハマのチャイナタウン直営地やデ?」
カークイ「・・・・・っっ!!」
リク「79年の放火未遂はカークイやデって、噂がいったんでも出たなら・・・ぶっちゃけ 【生きてこのハマ出られると思うか??】 関帝廟の檀家にゃ怖いのも居るでぇ・・・それになにより ハマの華僑社会も想像以上にゴッツいデ♪」
カークイ「そ、そんな脅しはワタシには通用しないことアル!ワタシにだって防御線は・・・」
リク「このハマのチャイナタウンは、カークイ、アンタの出身母体《香港人脈》だって忘れてへんか?・・世界を股にかけるアンタかて、香港ライン全体を敵に回しては・・・どうかな??この先・・・」
カークイ「こ、このワタシに・・・命令するのか? リク・・・」
わたいは震えるカークイの手からグラスを奪い ひとくちクチにして
「わ・・・まじぃ・・よっく飲めるなこんなのが・・。命令?いいヤ違うサ・・・【脅しだヨ】♪♪」
勝ったな・・・少なくともこのラウンドは。 まだまだ完全KOには程遠いが。。。
リク「ついでだから教えたろか?79年にアンタが蒙ったって 手ひどいシッパイな・・ぶっちゃけ その経済的損失するようにウラの方で暗躍したのが その・・《マオ老子》やねんデ。そう・・・見事に【してヤラレたんヤ カークイ】君も。それでのリベンジは周到に考えヤ?また次の機会にでも♪♪」
ベッドの上ではオンナ2人が同時にアクメを迎えて のけぞり合っていた。
そっちの「勝負」 イったのはドッチかな? ははは♪