リクです
「夜逃げのキンさん」から聞いた、チョっとシャレになんない感じの「ヒネクレ怪談」をばいたします。
キンさんが商社を辞めて いくつかの仕事を転職してから、今のハマの港に落ち着いたのですが。
今から四半世紀前 ハマの港は 今以上に荒くれていて。ケンカだの 血なまぐさい事が尽きなかったそうですが。
で その当時 親方だった 我がチーム「暁」の 通称 文鳥オヤジさん、「玉掛け」って、コンテナなどをクレーンにて吊るす際のロープかけですが、
この作業にはマジで天才的な手腕が買われていて、当時アチコチの よその港からも「来てくれ」って、出張仕事の依頼が絶えなかったと。
ほんで、チョっと場所は言わないほうがよい とある 北の地域の貿易港よりの依頼仕事で10日間ばかり出張仕事をする段となり、
サポート要員として キンさんと、もうひとり、「ケン」って通称の作業員 その3名で出かけたのですと。
で、その「ケン」って、年齢はほぼ キンさんと同世代、話も合うのですが、このケンってのが キンさんいわく『どうにも掴みどころの無い野郎でサ』・・・
どうも・・相当のインテリらしくもあり、数ヶ国語がわかるようでもあり(キンさん自身が5ヶ国語が堪能だからわかる)頭脳も明晰のようなんですが、
ケンは それをいっさい出さないってか・・・むしろ自分のアタマの良さを隠しているような雰囲気で。
自身の出目や、これまでの人生の経歴についても いっさい カムアウトしない。サケを酌み交わすようになっても その態度は変わらず・・・
キンさんとしては『ケンってのは、元は左翼の活動家だったかも知れないナ』って判断したそうで。事実 その時代 そういった、連合赤軍事件等の余波で、過去を隠して町場で働く人間が少なからず居たのも事実で。
で・・・どうも・・このケンってのが、出張仕事で来ている 北の港、宿舎はというと、付近のビジネスホテルなんですが、
部屋こそ違うのですが、どうも・・「オンナを連れて来ている」・・・雰囲気なんだとか。
その証拠ってか、いったん それぞれの部屋におさまった3人、キンさんが ケンの部屋を訪ねますと ほぼ決まったように「そこには居ない」
しょうがねえ ってんで、キンさんは、そのホテルには大浴場があり、そこに入りますと 脱衣所でケンを見かける。
体臭と雰囲気で「あ?コイツ 今の今までヤってやがったにちげんねぇ・・」って感じるキンさん。ケンは外へ出かけたような雰囲気は無い。
『このビジネスホテルの1室にオンナ泊まらせてやがんナ』と。しかしおかしい・・・どんだけ愛してるか知らんけど、ナニもそんなコソコソ隠すような必要あるか??
それになにより、僅か10日だゼ?? それすらもガマン出来ないほどのスケベとも思えないがケンは・・・
しかし 荒くれの仁義として、そこを深くツッコむのも無粋だからキンさんは追求もしなかったそうで。
そうして作業が進み 明日で出張仕事もUPするって日だったと。
その日の昼食時間となりました。配られた昼食の弁当、いつものように、景色のよく観えます作業場脇で広げようとしていたところ・・・
ふいにケンが・・『なあキンさん 親方。今日は風が寒すぎるからクラブハウスの中で食べましょうよ』と言い出し。
じゃ そうするか・・・と、ナニも考えず その提案にしたがったキンさんと文鳥親方で。
11月も終盤となった 北の地方はたしかに もう「真冬の寒さ」だけど なんかヘン・・・風が冷たいってなら、一昨日と昨日のほうが強風だった。それでも表で食べたんだオレらは・・
ストーブが焚かれたポカポカのハウスの中で 食べていたならば・・・
なんだか、表のほうがバタバタとやかましい・・・。大きな声や 大勢の足音やらが交錯している雰囲気で。
「チョっと見てきましょう」って、キンさんは立ち上がり 「オレも行くわ」って、親方も。
しかし・・ケンは、「ああ、オレは遠慮しとくワ。メシもじきに食い終わるから それから行くヨ」と。
で、外に出たキンさんと親方。 なんですか、岸壁のほうでワイワイ 人が集まりやたら騒いでいる・・・
「どうした?」っと問うなら、『うん、どうも・・・付近を通りかかった 下校時の小学生の男の子の姿が見えない・・《落水事故》海に落ちたンじゃないか?それを目撃した近所の主婦も居るってハナシで・・』と。
ハマの港ほどではないにせよ、貨物港として、海底を浚渫し、およそ7mほどの深さもある もはや冬の海 落ちたならたまりません・・・。
パトカーやら救急車も続々とやってくる。遅れてケンも出てきた。
キンさんは「これこれなんだとサ。・・・本当に落ちたのかなあ子供。気の毒に」と告げるなら ケンはナンでか??みんなが懸命に捜索している場所とは やや違った方向の海面を見つめながら、
『・・・ったく おっかねぇ《やつら》だ・・。手段選ばずってかヨ・・・』とつぶやいたのだとか。
キンさんは深く後悔しました。
いつも通り本日も この海が見渡せるこの周囲で弁当を食べていれば、海に落ちたかもしれないって今 大騒ぎになってます その子供をいち早く発見できたし、泳ぎにも自信がある・・もしかしたら助ける事も出来たのではないか?と。・・・。
少し後ろめたい気分になってケンと親方と、今起きた事件についての事を話し始めた。
「ぶっちゃけヨ~・・今日もオレらが あそこで飯食ってたら、オレらが何か出来たかもしれないよな」と・・・。
するとケンが・・・
「ははは・・それは無理・・無理だって。俺は今日あそこで飯食うの嫌だったんだよ ああ・・・」 って。
はあ??ナニいってんだ?テメエは?? って思ったキンさん「それってどういうことヨ?」とケンを問いただすなら・・・
ケンは「じゃあ反対に訊くけど。もう冬だゼ?今日みたいにクラブハウスの中で弁当喰った方が暖かくて快適なのに、何で?キンさんお前、毎日海岸脇で弁当食べたがったのヨ?」
キンさん「え??・・そりゃ・・・海見ながら外で飯喰った方が美味いと思って・・・。」
ケン「だけど、その割にはお前は、毎日ああ寒い!寒いって言いながら 弁当喰って弁当喰い終わったらスグに事務所戻って暖をとってただろ?」
そう言われると、確かに海岸で弁当喰い始めたキッカケは海見ながら食べた方が気持ち良いと思ったキンさんですが、2日目以降は、何であんな風避けも無いクソ寒い場所で弁当を食い続けてたのか我ながら不思議に思いましたそうで。
って・・見る見る 話すケンのカオが真っ青になってきて、それは単に冬場の寒さのせいではないような・・・
ケン『 ・・・《やつら》だヨ うん・・・ 』
キン「え??やつらって??」
ケン「うん《やつら》・・・。《やつら》の【 狙いは初めから キンの字 お前で】・・・ず~っとお前は《やつら》に呼ばれてたんだよ・・・」
キン「???・・・」
ケンはブルブルと震えながら 云う。
・・・初めて 今回の出張仕事のハナシを聴いた瞬間から・・・、俺は 海にいる《やつら》から、キンの字 お前が《やつら》から誘われてるのを感じていたんだワ。
うん・・実は俺 《そっちの能力》有る家系なんだ。でもけっして万能でないし、《やつら》が正確に何者かも、どんな因果でキンの字を つけ狙うかもわからん・・・。
だけども、マジでヤバイいゾこれは!ってのはビンビン!わかった。
とは言ってもそんな事を会社や元請の監督に真顔で話しても馬鹿にされるだろうってわかりきってるしヨ、
下手したら狂人扱いで追い出されるだけなので、かといって仲間であるキンの字 お前を放置出来ないからサ、無理に頼み込んで《俺も》この港についてきたンだワ うん。
だからココに来てより 今日まで・・・毎日 昼飯をココの場所で食うの付き合って、キンの字 お前のことをズっと監視していたんだ・・・。
俺はナ、キンの字 アンタが《やつら》に誘われてるのは解っていたけど、中々その《やつら》の姿を見ることは出来なくてナ・・・
どうやら霊?の方は一方的にアンタに意識チャンネルみたいな物を合わせ、もっと波際まで引き寄せたがって居るようだったゼ うん。
だけど・・キンの字《そっち系》に敏感でなくてアンタ助かったゼ(嗤)、肝心のアンタが鈍すぎて(笑)さすがの《やつら》も手こずってたようだ うん・・・。
・・・だからヨ・・《やつら》は、・・お前のスグ目の前で・・・問題のその子供を海に引き込もうとした訳だ 間違いない・・・。
港のほうで大きな声が・・『あ?アンカー(船の碇)の鎖ワイヤーのそこ!!なんか引っかかってる。子供だ!!気絶してるけど 息が有る♪救急車!! 早く!!」
歓声が沸く港の現場・・・
・・・な?さすがの《やつら》でも、本来 キンの字 アンタを誘い出す《ダシ》でしかない子供をそのまんま あの世に攫うほどの畜生ではなかったってことだ。 うん。
それでも【やつら】からしたら子供の方が、頭が固いお前と違って誘い易いしな。
手段が乱暴だ・・・それになにより《おっかねえ》・・・わかるだろ?そうなればヨ・・・、
知ってるよ、キンの字 アンタが、かつて在籍した商社時代に、イランから決死の大脱出、60数名を率いて邦人らを救出したって あの話な・・
それでも 脱出道中の途中で 1人の小学生の男の子を結果 病死させてしまったことに、今でも多大な後悔と懺悔を抱いてるって。
ぶっちゃけ・・《やつら》も それ知ってた・・・。そのトラウマでアンタが商社辞めたことも、子供に強い 思い入れ有るってことも含めてナ・・
まさに 目の前で 海へと子供が落ちたならアンタどうするヨ??・・・迷わずアンタが子供を助けに海に入ってくる事・・・知ってたんだなぁ、《やつら》は。
まぁ俺が邪魔したから子供が身代わりになっちゃった訳だけど・・・。ぶっちゃけ その子引きずりこまれなくて よかった・・・っっ!!
まことに その子は不憫だがナ、落ちた子にも《素養》があったんだ うん。 ぶっちゃけ《やつら》とピッタリ波長が合う子供だったんだ その子。
ぶっちゃけ・・、今日は俺の目にもハッキリ《やつら》が見えたよ。
さっき昼食時になって、 俺がお前を海岸から連れ戻した時の《やつら》・・マジでだけど、雰囲気は俺もちょっとビビったゼ。本命のお前を連れ戻されて怒ったのかな?
キンさん「・・・そこまでわかっていて・・・どうして!?ケン!オメエって男は その子供を放置したのかヨっ!?」
そうしますとケンは少しだけ哀しそうなカオをしながら・・・
「お前は誘われてるクセに何も感じないから、そんな事言えるんだよ・・・ 子供が通りかかった場所、あそこってありゃ完全に《やつら》の領域入ってたし、お前だってアレが見えるなら絶対近づけないし関わり持とうなんて思えないって。」
キンさん「・・・・・」
「 本当凄かったゼ、《やつら》のあの・・恨めしそうな顔・・・。思い出しても震えが止まらねえヤ。なあ?《霊感》ってのはジツはダレにも有るんだ。見えない、感じない人は無意識に誘われてる事がある。また、誘われてる事にも気が付かない」
キンさん「そ、それでも なんか一言・・・注意、警戒ぐらい告げてくれても・・・」
ケン「でもそれは無理だ・・・。逆にナ、見える、感じるって人間は、危ない場所には下手に近づかない ってか《近づけない》」
キンさん「あの子供が あんな目に遭うってのは運命だったと??」
ケン「うむ・・運命までは正直 俺にもわからん。分水嶺や分かれ道ってそれだろうナ。確率は神にも把握出来んヨ。だけど、これは是非わかって欲しい。この俺だってビビってたんだ、普通じゃいらんなかった!だってサ・・【 《やつら》に狙われていたのは・・この俺も同様なんだから・・・ 】」
キンさん「 えっ!?・・・・・」
ケン「世間のダレだって、道路で通行人が刃物持ってる男に追いかけられてたら、身を挺して阻止できるか? 普通出来ないよな?それは関わった後の面倒を知ってるからだ。」
キンさん「その・・《やつら》って一体ナンなんだ??ケン、オメエも狙われていたって・・・」
ケン「さあな??いったよに《やつら》の正体も因果も皆目検討つかんヨ。なさけないけど 俺だって命は惜しい・・。相手が人間なら通報する事はできるだろうけど、相手がこの世の者じゃなかったらマッポも相手してくれないしナ」
ケンはさらに・・・
・・・気になってたか?俺がコッソリと帯同させていた「オンナ」。。。
ま、愛人には間違いなくてサ、ぶっちゃけ 毎晩ヤってた訳なんだが(笑)ホンの10日って短期で ナニも連れてくるなんてのはマトモじゃないよな普通?
訳があってヨ・・いったよに 俺の《能力》ってのは全然 修行はおろか 磨いてもいないから、なんてえか非常にバラつきがあるんだワ。
俺のオンナな・・ジツのとこ、出身は沖縄の宮古島で、家系ってなら、代々の《ユタ》なんだ うん。
キンさんヨ、お前はただの1ミリも、気に掛ける必要は無いゼ、そんな俺は お人よしじゃない。むしろ【俺のほう】なのだ うん・・。オンナに無理いってついて来て貰い、
一日中、ホテルの部屋で 俺とキンの字アンタの無事を祈祷して貰ってた そんな訳だ 同伴の理由はナ。科学的なハナシじゃねえけどナ。
・・ん?? 《やつらの正体?》・・ああ、オンナには当然わかってるらしい。。。うん、聞いてみたよ、そしたなら・・・
オンナが言うにはサ・・『あんたは 知らないままでいた方がしあわせだから』って、黙っちゃって・・・。
でも、今日がただけはバッチリ!見えたじゃんか?なんとなく、判った・・・。どういう因縁で俺にもつきまとってるかが。
キンの字、アンタは 知らないままでいた方がイイよ、知ってしまったならおそらくは、この先、おっかなくて海のそばで仕事なんか出来なくなるおそれもあっからヨ。荒くれがそんなじゃ、勤まらんわナ?
・・・って ことで。。。
唐突に終わるこのハナシでおますが・・・。
このハナシ、ナニが出てきた バッチリ見えたってハナシやおまへん。ぶっちゃけ すべては「ケン」による独白で完結していますよネ?
どっこい!ンなヨタ話 ワシは手放しで信じるかって!
だからに、ナンの「確実な証拠」は1つもないス。メンタル的な観点として考えれば、ケンが「嘘つき」ってより、『作話症』って・・地元の子供が海に落ちたらしいって 1つの「結果」から、ストーリーを瞬時に脳内にこしらえて、他人に いかにもそれらしく話すと同時に、自分自身もその「作話」を真実であると認識してしまうって、世の中には意外に こういった症状に罹患している神経患者は少なくないものです はい。
「若年性認知症」の可能性も『有る』
ケンが同伴してきたカノジョが 宮古出身の「ユタ」の出であるってのも、ど~も・・リクめとしては『チト、あまりに出来過ぎてなくない??』って思うのでありまして。
ユタはみなちゃまもご存知だと思いますが、沖縄諸島に多い いってみるなら「民間霊媒師(シャーマン)」で、
かの地方では未だに「医者半分 ユタ半分」って言葉があり、ある意味で身近な「拝み屋」としての機能を果たしています はい。
ほんでネ・・リクめの「家系」ってのも、ユタとは関係ないですが、源流をたどれば、ウチとこも、熊野地方で 巫女系のシャーマンをしていた筋の家でしてネー、
ヘンなハナシ、シャーマンの『物事を立体的に《見通すチカラ》』ってのは、これまでにも何度も経験してますし、ある意味 身近で「いつも見ていた」ともいえますのぢゃヨ うむうむ・・・
でもネ・・・逆に言うなら(ココが肝心ス)『だからナンやねん??』・・・ってことなんですナ~~・・・
ぶっちゃけ・・・『ナンも その他の事については、我ら《凡人》と変わらへんデ』ってこと・・・
「ユタ出身」って触れ込みのAV女優も居るぐらいで
シャーマンの「血脈」をバッチリ!引き継いでいるって言ってきかない(笑)ウチとこの お母ンにしろ 親戚のおばちゃんにしろ、
「シャーマンだから」って、当たり前ですが 『けっして!万能なんかじゃない』・・・。
いっくら買っても 宝くじは当たらないし、食いすぎてはお腹下したり、コケては血イ出したり くだらん通販番組観て 要らんモノばっか買ってるし(^^; 『あんたアホちゃうか??』ってなことばっかしてます(笑)
ある意味で「楽屋裏」をズっと覗いてきたわたいだから、ぶっちゃけ「世の中に すべての事象を把握できる《ユタ》なんてそうそう居る筈はない」って冷静に思うのであります。
ドッチかとゆーと、一連の「ハナシ」は、ケンって御仁が、キンさんとかにナイショで 出張に同伴したテメエのカンジョの存在、
それの『いかにもの 言い訳』として デッチ上げた「作話」ではなかったかなあ?? って。
でも・・「この話」・・・ココにて開陳する気になった「その理由」・・・
キンさんが言うには、「自分ではお人良しじゃない」と言っていたケンでしたが ・・・
この事件から数年後・・・ケンは、西東京の秋川渓谷を訪れていた際、急に増水した川で溺れてる子供を助けようとして、その小学生男子のコは無事に救助するも、自分だけ 急流に流され 結果、逝ってしまいましたのだと・・・。
キンいわく『葬式をサ、出してやろうとしてハタ!と困った・・・。ぶっちゃけ《ケンのやつ》、身分証明書から 役所とかへの届出とかの全部が《ガセ》で・・要するにケンって、《この世には存在しないユーレイだった》ンだワ。だから、遺族たってドコに居るかもわかんない。最後までわかんない奴だった。《やつら』ってよりも、ケン《あいつ》自身がミステリーだったといえるわナ』と。
ケンそのものが最大の【 謎 】。。。
ケンのような 正体不明の 訳あり人間がチョっと以前にはハマにも少なくなかったってお話で・・・
それにしても「ケン」って御仁、2度目は見て見ぬフリは出来なかったのかな?・・・。
この手の問題 あまり深く考えない方がイイでス